第18話 ―未帰還の覚醒―

―――――――――20時30分・・・「プライベートルーム」


――――いてて・・・さすがに今回の戦いは堪えた・・・・・

ルームに着くとお気に入りのイスに腰をかけながら深くため息をついた――――


「皆、お疲れ・・・・今回の戦いで俺も皆の服もボロボロになっちまったな・・・・」

「お疲れ様ムクロ君・・・その・・・新しい服・・・・私でよければ新しいの作るよ?」

「そう言えばユリハは裁縫が得意だったな。

なら・・・面倒なければよろしく頼む。」

「ユリハ~私も服ボロったから新しいの作ってよ~お~ね~が~い~」

「私も今回の戦いで服がボロボロになってしまった・・・ユリハ、私の衣装も頼めるか?」

「よ~し、私が皆の分の服を作っちゃうよ!!

と、いうことで・・・・皆のサイズ測らせてね!」

ユリハの目が光ったと思うとクーリアたちの体にメジャーを巻き付け、流れるように計測し終えるとゆっくりと俺の方に向かって歩いて来た――――


「ちょ、ちょっと待てユリハ・・・お・・おい、クーリアたち・・・大丈夫か?」

「う・・うん、ユリハって・・・割とテクニシャンなんだね・・・・・」

「この・・・流れるようなメジャー捌き・・・これが白百合のテクニックか・・・・」

ダメだ・・・あの技を受けたら受けたら・・・・

俺は戦いの疲れで抵抗もできずユリハの餌食になった――――

そして、ユリハのテクニックはすごかった・・・・


「これで計測完了っと♪皆の体系データとれたから、これから服作ってくるね!

ムクロ君、隣の作業部屋借りてもいいかな?」

「あぁ・・・好きに使ってくれ・・・・」

「ユリハ・・・私たちの体形データを漏洩とか悪用しないでよ~」

「クーリアはリアルの体系データでも使っているのか?」

「な・・ななな・・・ムクロっちのバカーーーー!」

「ムクロ・・・そこはリアルじゃなくても失言だぞ・・・・バカ者め・・・」

クーリアは怒るや否や俺にビンタを叩き込み、アイテム屋に行ってくると言いルームを出て行った――――


今の状況を冷静に見ると俺とミストの2人っきりの状況になっていた。

――――何だろう・・・・同じ家に住んでいる姉弟の関係なのに何か気まずい・・・・

何か話すべきか?――――だが話す内容が思い浮かばない!!!

家では普通に話すのにこうやって意識すると―――――


「何を意識してるのですか、変態マスター・・・・」

「私もその意識は少し考えものだと思います、マイマスター」

俺はルミ子とレイに不意打ちの冷めた言葉を食らいつつ、エラーモンスター討伐による帰還できたプレイヤーのデータ等の結果を聞こうとした時――――


「ムクロ、私もクーリアが向かったアイテム屋に行ってくる・・・

少し心配でな――――」

そう言うとミストがルームから飛び出して行った――――


「コホン・・・気を取り直して・・・・まずは、先程のエラーモンスター討伐の件お疲れ様でしたマスター。」

「マイマスター、私も討伐に連れて行ってくだされば早く済みましたのに・・・・」

レイが俺の腕にしがみつきながら愚痴を話す中、ルミ子が俺の頭にチョンと座り結果報告を始めた。


「変態マスター、レイとじゃれつきながらでも構いませんが・・・・マスターが知りたがっていた情報の結果報告をお伝えします。

エラーモンスターのキル被害により未帰還のプレイヤーは全員、グロリアの運営する医療施設で覚醒が確認されました。

エリエントと言うプレイヤーも意識を取り戻し家族と面会したそうです。

結果報告は以上となります。」

俺はルミ子の結果に飛び跳ねたくなる程昂ぶり、涙が流れ出しそうになるくらいに嬉しかった―――



――――やっと、やっとだ・・・・この数年間、俺がしてきた行為は無駄じゃなかった!!

俺は子供のようにはしゃぐ事は出来なかったが、ルミ子たちは俺の意識を感じ取り―――


「マスター、おめでとうございます。」

「マイマスター、おめでとう・・・です。

この時、どう言ったらいいのかわからないので・・・申し訳ありません。」

俺は2人を抱きしめ「ありがとう」と言うと―――――


―――――――――――ピピッピピィ・・・・


俺のメールポストに1通のメールが届いた。

――――その差出人と中身を確認すると・・・・


―――――差出人は・・・・エリエントッ!?

俺は急いでメールの中身に目を通す―――


「助けてくれてありがとう、ムクロ。

私の事は兄からある程度の話を聞いていると思いますが、改めて自己紹介を・・・

現実での私の名前は御羽おばコトハと言います。

改まって自己紹介も何か変ですが・・・よろしくお願いします。

えっと・・・その・・・昔みたいにグロリアを冒険プレイしたいので、その・・・また一緒に遊んでくれますか?」

――――と書かれていた・・・


――――この丁寧な言い回しは昔からのエリエントのままだな・・・・

―――やっと戻ってきたんだ・・・遊ぶに決まってるだろ。

俺はグロリアのフレンド申請と自分のプロフィールをメールに書きエリエントに送った。


俺はエリエントたちが覚醒した事がTVや掲示板等に情報が流れていないか確認したが一切そう言った情報が流れてはいなかった・・・・


――――結果的に見ると会社側か何かしらの力が働いているとみて間違いないか・・・・

昔に未帰還事件が起こった際にも大きな騒ぎにも成らずに沈静されていた事もあり国が絡んでいる可能性も考えられる・・・か・・・


あと・・・・エラーモンスターが最後に言ったSLT・・・・御羽が言っていた施設の名前だな・・・

俺は疑問に思いルミ子たちにSLTの事について情報を集めるように指示した。


「また、マスターは変なことに首を突っ込もうとしてますね――――

ハァ・・・・何度言っても聞かないのも知っていますので、それでは情報を集めます・・・」

「ありがとう、ルミ子。」

俺はルミ子をなでなでしながらそう言うと――――


「マイマスター、私はどうすればよいでしょうか?

何をすれば、なでなでを頂けるのでしょうか?」

レイもなでなでをして欲しそうに目をキラキラさせながら期待してこちらを見ていた・・・・

――――そうだな・・・レイは情報操作には不慣れだからな・・・・


「レイは情報操作が苦手だろ?

レイは何が得意なんだ?」

「私の得意ですか・・・・破壊、殺戮、分解、粉砕――――――」

可愛い顔したちんまいサポート妖精からは想像もつかない物騒なワードが大量に流れ始め俺は途中から聞く事をやめた――――


「えぇ・・・その・・・お茶でも入れてもらおうかな・・・ははは。」

「マイマスター、了解しました。

迅速にお茶の用意を致します。」

レイはくるりと回るとメイドの姿になり、体系もちんまい姿からアバターの体系に戻るとペコリと頭を下げてから台所に向かった。

―――俺の意識したメイド姿を自分の衣装にしたのか・・・サポート妖精は色々と万能だな・・・


俺がくつろぎながらステータスを振り分けていると、台所からレイが戻ってきた―――


「マイマスター、ムクロ。

お茶の準備ができましたのでどうぞ・・・

今回のお茶菓子はユリハさんが大好きなリーフクッキーになります。

・・・ッ!?

マイマスター・・・いえ・・・ご、ご主人様と呼ぶのが・・・決まりなのですか―――うぅ・・・破滅したい―――」

―――俺はメイド口調を話すレイを想像してしまいレイが顔を赤くしながらメイド口調で話し始め・・・


「ユリハのリーフクッキー勝手に食べてもいいのか?

怒られたりしないか?」

「多分、大丈夫です。

ご主人様に甘いユリハさんなので・・・・きっと・・・そわそわ・・・」

俺は少し心配になりながら一枚リーフクッキーを食べながらお茶を飲んだ―――

―――レイのお茶は初めて淹れたとは思えないくらい美味しい紅茶であった。

そして、リーフクッキーもユリハが大好きと言うのがわかるくらい美味しかった・・・


「レイ、美味い紅茶ありがとうな。

1人で飲むのもアレだからレイも一緒に飲まないか?」

「あ、ハイ・・・是非いただきます。

その・・・・ご褒美の・・・・」

俺はルミ子にしてあげていた、なでなでを思い出し。

メイド姿のレイになでなでしてあげた――――


「そうだ・・・レイ、ユリハにも紅茶を持って行ってくれないか?」

「そうですね、ですが・・・ご主人様。

その役目は私ではなく、ご主人様自身が行うべき行為だと思われます。」

俺はレイに促され俺が淹れた紅茶をユリハのいる作業部屋に持って行った――――


「ユリハ、ブレイクタイムだ・・・美味いかわからないがお茶を淹れたから飲んで一息つこう」

「ムクロ君・・・ありがとう。

服も大体できたからそろそろ休憩しようと思ってた所だから、ありがたく頂くよ・・・・

―――あ、紅茶だ。

私、紅茶大好きなんだ、このお茶菓子・・・私のリーフクッキー!?

あうぅ・・皆で食べようと置いてたんだけどなぁ・・・また買っておかなくちゃ・・・」

「その・・・ゴメン、勝手にクッキー開けちまって。

弁償するから・・・・」

「ううん・・・いいの。

皆で食べようと思ってたモノだから・・・そのムクロ君はこのクッキー食べた?

食べてたらなんだけど、クッキーの感想が聞きたいなって・・・」

俺は先程食べたリーフクッキーの感想をユリハに伝えると――――


「ムクロ君の口に合ってよかったよ。

今度は皆でお茶を飲みながらお話ししたいね。」

「あぁ・・そうだな。

その為にも、戦争を突破しないとな!」

「そうだね、頑張ろうムクロ君!」

俺とユリハが楽しく話していると、扉からクーリアとレイが覗き見るようにジーッと見つめていた――――


「ムクロっちとユリハ!な~にイチャイチャしてるんだよ!」

「「イチャイチャなんてしてない!」」

俺とユリハが息を揃えて否定するも、クーリアの放つ疑いの眼差しが俺たちを照らしていた――――


「さぁクーリア向こうに行こうな~ユリハの作業の邪魔になるし・・・・」

「もぅ・・・ムクロっち~誤魔化さないでよ~むむぅ~~」

俺はクーリアとレイを引きずりながら作業部屋を後にした―――――


――――――――――――20時55分・・・「プライベートルーム」


現在までのレベルリザルト――――

ムクロLv35

クーリアLv31

ユリハLv35

ミストLv34

エリエントLv?

ミカゲLv33

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