猫の見る夢

雪野目 晴

第1話

その猫はいつからか、大木の下に姿を現すようになった。

綺麗な三毛猫で、近所の人々にも可愛がられていた。

毎日大木の下にいて、何をするでもなくただひたすらそこにいるのだ。


雨の日も

風の日も

真夏の暑い日には大木の上で涼んでいた。


たくさんの人々が行きかうのをじっと見つめていることが多く、地元では


”人待ち猫”


などと有名になった。


”今日も来なかった”

行きかう人々に目をやり、何度目かのため息をもらす。

学校帰りの子供たちがエサ持ってきてくれた。

正直食事中は触らないでほしいのだが、我慢する。運動もかねて子供たちとひとしきり遊ぶと、子供たちはあっという間に帰っていった。

周りはすっかり日も落ち、再び訪れた静かさに体を丸めた。

近所の家からは明かりがもれ、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


ふいに風が吹きその冷たさに震えが走る。

冬毛に生え変わったとはいえ、冷たさが身に染みる。

今夜は近所の神社の縁の下にでも行こうかと考えているうちに、意識は沈んでいった。

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