猫の見る夢
雪野目 晴
第1話
その猫はいつからか、大木の下に姿を現すようになった。
綺麗な三毛猫で、近所の人々にも可愛がられていた。
毎日大木の下にいて、何をするでもなくただひたすらそこにいるのだ。
雨の日も
風の日も
真夏の暑い日には大木の上で涼んでいた。
たくさんの人々が行きかうのをじっと見つめていることが多く、地元では
”人待ち猫”
などと有名になった。
”今日も来なかった”
行きかう人々に目をやり、何度目かのため息をもらす。
学校帰りの子供たちがエサ持ってきてくれた。
正直食事中は触らないでほしいのだが、我慢する。運動もかねて子供たちとひとしきり遊ぶと、子供たちはあっという間に帰っていった。
周りはすっかり日も落ち、再び訪れた静かさに体を丸めた。
近所の家からは明かりがもれ、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
ふいに風が吹きその冷たさに震えが走る。
冬毛に生え変わったとはいえ、冷たさが身に染みる。
今夜は近所の神社の縁の下にでも行こうかと考えているうちに、意識は沈んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます