第25話 修羅

阿修羅 国宝の阿修羅像の顔は『怒り』・『悲しみ』・『意思』を表すという三面六臂の鬼神。

諸天と戦い続ける荒ぶる戦神。

その3つの顔は誰に向けられているのだろう。


怒りは立ちふさがる者へ

悲しみは…

意思は…


すべて外側に向けられているのだろうか?


強要の無い僕には理解することできないし、語ることすら烏滸がましいのだが…あるいは己に向いているのではないだろうか。


『怒り』・『悲しみ』・『意思』

僕は、その全てが己に向けられているような気がしたのだ。


映像でしか見たことはないのだが…その姿に涙が溢れた。


修羅とは戦い続ける者を比喩した言葉。

必ずしも誰かと戦っているわけではない…己と戦う者も、また修羅と成り得るのだ。

それが、怒りでも…悲しみでも…意思であっても…。

それと向き合い戦うこと、そんな生き方を具現化した仏像だからこそ、僕は涙を流したような気がする。

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