第17話 郷愁

「この食堂…まだやっていたんだ…」

子供の頃、この店の炒飯が好きで、たまに出前を頼むと僕は炒飯ばかり頼んでいた。


店の駐車場には車の1台も停まっていない、本当に営業しているかも怪しい。

僕の記憶では、愛想の悪い気難しそうな店主がいたはずだ。


店に入ると、誰もいない。

奥から、腰の曲がった老人が顔をだした。

(こんな顔だったかな…)

僕は炒飯を頼んだ…しばらくすると炒飯が目の前に置かれる。

欠けた器に盛られた炒飯。


ひとくち食べると…あ~こんな味だったな~と懐かしさが込み上げる。

家の炒飯とは違う味…この店の炒飯にはカマボコが入っている。

このカマボコが好きだった。

薄味で、焦げの少ない炒飯。

変わらない味…。

なぜだろう…涙が溢れた…。


今は、老夫婦が営む店になった…僕も、同じだけ歳を重ねているということを、悲しいと感じた。

そんな風に感じる自分が…惨めで…憐れ…僕は…今もツラいままだ…。

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