第17話 郷愁
「この食堂…まだやっていたんだ…」
子供の頃、この店の炒飯が好きで、たまに出前を頼むと僕は炒飯ばかり頼んでいた。
店の駐車場には車の1台も停まっていない、本当に営業しているかも怪しい。
僕の記憶では、愛想の悪い気難しそうな店主がいたはずだ。
店に入ると、誰もいない。
奥から、腰の曲がった老人が顔をだした。
(こんな顔だったかな…)
僕は炒飯を頼んだ…しばらくすると炒飯が目の前に置かれる。
欠けた器に盛られた炒飯。
ひとくち食べると…あ~こんな味だったな~と懐かしさが込み上げる。
家の炒飯とは違う味…この店の炒飯にはカマボコが入っている。
このカマボコが好きだった。
薄味で、焦げの少ない炒飯。
変わらない味…。
なぜだろう…涙が溢れた…。
今は、老夫婦が営む店になった…僕も、同じだけ歳を重ねているということを、悲しいと感じた。
そんな風に感じる自分が…惨めで…憐れ…僕は…今もツラいままだ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます