第11話 自然

風俗嬢の彼女と別れて…僕は独りで昼食を摂る。

パンを2個買って、丘陵公園へ向かった。

GW最終日、彼女と別れてなくても昼食は食べないか…独りで食べていたのだが…。

彼女は、まだ眠っている時間だ。


家族で賑わう広い公園。

独りで来園するのは僕だけではないだろうか…。


自然と他人が少ない場所を探す。

芝生に腰かけて、噴水の近くでパンを食べる。

美味しいのだろう…そういう感覚が鈍くなっている気がする。


このパン、彼女に買った事あったな~などと思い出す。

これからはスマホが鳴ることも少なくなる…彼女に何かを買うことも無くなる。

金も手間も掛かる娘だった…でも、それ以上に僕の傍にいることを愉しんでいる娘だった。

猫の様な娘…。


僕の後ろで、若い夫婦が子供の手を引いて歩く。

「やっぱり自然はいいね」

父親が子供に話しかける。

(自然?)

彼らにはコレが自然だと視えているのだろうか?


芝生は整えられ、人口のオブジェが並び、花は花壇で綺麗に並べられて咲いている。

景観ですら丘も…山も…綺麗にヒトが造りだした風景だ。

多くの人が綺麗だと感じるように植物を並べた『不自然』だ。


彼らが好きな『自然』は、誰かが造りだした『不自然』。


ココに自然なんて一つもない。

虫すら湧かない水が流れる人工の川・地を這う蟲すら嫌う薬に塗れた土…。

ココは『不自然』と言う名の箱庭。


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