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「もっと少人数ですか……。望月は交友関係が広いからな。これでもセーブしたつもりですが……。わかりました。ごく親しい友人だけでやりましょう。婚約パーティーとなると、どうしても規模は大きくなってしまうので、食事会ということでいかがですか?」


「それなら大丈夫かと。南原さんが主催したパーティーで一緒だった友人を誘います」


「そうですね。二人を結びつけたのは、南原のバースデーパーティーだから。そうしましょう。場所や日時はまた連絡します」


「はい。お任せします」


 今夜はいつになく会話が弾んだ。木崎も私も、留空の幸せのお裾分けとばかりに、会話を楽しんだ。


 そのせいか、お酒も進んだ。


 ゆっくり食事を楽しみ、私達は胡蝶蘭を出る。エレベーターに向かう途中、木崎が私の手を握った。


 手を繋いだだけで動揺するなんて、中学生みたいだな。


 強く握りしめられた手。

 階下から上がってくるエレベーター。

 目の前でドアが開く。


 そこには……

 日向と吉倉が仲良く立っていた。


「雨宮さん、こんばんは」


 先に口を開いたのは吉倉だった。エレベーターの『開』ボタンを押したまま、日向は私を見つめている。


 私というより、木崎と繋がれた手をじっと見ていた。


「日向さん……こんばんは」


「雨宮さんこんばんは」


「君は、あの時の……」


 木崎は日向と一度逢ったことがある。


「どうぞ」


 木崎と手を繋いだまま、私はエレベーターに乗り込む。


 日向はエレベーターから降りると思っていた。


「吉倉さん、ごめん。俺、急用思い出した。胡蝶蘭で金額の打ち合わせしてきて」


「えっ?日向さんは……?」


 最上階に吉倉を残し、エレベーターのドアが閉まった。

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