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「もう体調は大丈夫ですか?」


「実家でゆっくりしたから。もう大丈夫」


 日向に会釈し、女子寮のドアに手を掛けた。


「俺のせいで、会社を休んだと思ってた」


 背後から日向の声がしたが、振り向けなかった。


「日向さんには関係ないよ。あの日、雨に濡れたから……」


「本当にそれだけですか?俺が……キ……」


 女子寮のドアが開き、秘書課の社員が出て来た。吉倉よしくらちはや、確か……日向と同期だ。


「こんばんは。雨宮さんもう体調は大丈夫ですか?花柳さんがとても心配されていました」


 そう言いながら、吉倉は日向をチラッと見上げた。秘書課は他の課とは異なり、容姿端麗、尚且つ役員の秘書ともなれば一目置かれた存在。


 彼女はまだ新人だが、その美貌は陽乃に勝るとも劣らず。


「日向さん、こんな時間に立ち話ですか?」


「ちょっとコンビニに」


「そう。私もコンビニに行くの。一緒に行ってもいい?夜道は怖いから」


「いいですよ」


「雨宮さん、失礼します」


 吉倉は私に会釈し、日向を見上げた。恋する女性の眼差し、それくらい私にもわかる。


 寮での男女交際は禁止。

 それなのに堂々と肩を並べコンビニに向かう二人。


 日向は振り向き、私に会釈した。


 話の途中で、吉倉に日向を奪われた気分。ていうか、私、なんで苛ついてるのかな。


 日向の話の続き、なに期待してたんだろう。


 あのキスをリセットするために、私は実家に戻ったのに。リセットするどころか、何度も再生している。

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