111
日向とのキスを、自分の中でキチンと整理したかったから。
◇
―緑ヶ丘―
両親と妹の住むマンション。帰宅すると玄関の鍵は開いていた。
「ただいま」
「お帰り。どう熱は?」
「まだ三十八度台。注射してもらったから、少し下がると思う」
「そう。部屋に布団敷いてあるから、早く休みなさい。ご飯は食べたの?」
「うん。寮のおばちゃんがお粥作ってくれたから」
「そう。パジャマはベッドの上に置いてあるからね」
「うん」
実家なのに、妙に居心地が悪い。一度家を出ると、みんなそんな感じになるのかな。
父は出勤し、妹も大学に登校し、今は母しかいない。父が帰宅すると、尚更居心地は悪くなるが、この体調だ、寮に戻る気力も失せる。
両親が気を使って用意してくれている私の部屋。花織の荷物は片付けられ、部屋にあるのはベッドと小さなテレビだけ。
ベッドの上に置かれた新しいパジャマに着替え、そのままベッドに倒れこむ。
「柚葉、氷枕いる?これ、スポーツ飲料。発熱した時はしっかり水分とりなさい」
母がスポーツ飲料とコップを持って来てくれた。
「氷枕はいらない。少し寝るから」
「そうね。寝るのが一番。汗をかいたらクローゼットに新しいパジャマと下着が入ってるからね」
「わかった。お母さん色々ありがとう」
これで日向とのキスもリセット出来るかな。ぐっすり眠って、全部忘れて、仕事に復帰しないと……。
解熱剤の作用で、そのまま深い眠りに落ちた私。
目覚めたらすでに夜六時を過ぎていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます