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「やっぱり……気付かれなかった」
「歯科医が虫歯に気付かなかったってこと?」
美空の言葉に陽乃は何かを直感したようだ。
「留空、もしかして望月歯科クリニックに行ったの?」
留空はコクンと頷いた。
美空はケホケホと噎せている。水の入ったグラスを掴み、一気に飲み干した。
「留空、彼のところにそのまま行ったの?」
「……うん」
陽乃は呆れたように溜め息を吐いた。
「気付くわけないでしょう。ナチュラルメイクに眼鏡、私服も地味だし、あの時のシンデレラだなんて誰も気付かないよ」
確かに……
あの日とは全然違うけど、声は同じだしカルテには名前も書いてあるはず。
気付いてくれてもいいのに。
男って、結局は容姿で女を選別してるんだ。
「やっぱり私じゃダメなんだって実感したんだ」
「だからセレブな人間は嫌なんだよ」
美空は吐き捨てるように、嫌悪感を剝き出しにする。陽乃は留空に視線を向けた。
「望月さんに興味あるなら、私がセッティングするよ。またシンデレラに変身すればいいでしょう。それとも、留空は童話みたいに灰だらけの見窄らしい女の子に、王子様がガラスの靴を差し出すとでも思ったの?」
「私は……別に」
「あれは童話。そんなことは現実には有り得ない。大人なんだから、夢みたいなことを言ってないで、現実見なさい」
陽乃にバッサリ切り捨てられ、留空は今にも泣きそうだ。
陽乃は携帯電話で誰かとLINEをしながら、綺麗な顔で毒舌を吐く。
「陽乃、それくらいでもういいでしょう。みんなが陽乃と同じ価値観だと思わないで」
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