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留空は数人の男性に囲まれ、ぎこちない笑顔だが満更でもなさそう。
「留空にもついに春が来たね」
「そうだけどさ。彼氏いない歴二十七年の留空には刺激が強すぎる。男に対する免疫ゼロだもの」
「確かに」
「柚葉はどうなの?イケメンに口説かれてたようだけど」
「見てたの?名刺もらっただけだよ」
「見せて、見せて」
美空は私の手から名刺を奪い取り、まじまじと見つめた。
「木崎クリニック。内科医木崎晴、個人病院の跡取り息子?」
「そうみたいね」
「雇われ医師よりいいわね。長身だしイケメンだし、南原さんよりも爽やかな紳士。一応、木崎クリニックの次期院長だし、物件としては悪くない」
「そんな言い方、木崎さんに失礼よ」
「あらあら、随分加担するのね。一瞬で落ちたの?」
「落ちるわけない」
「まっ、いっか。胃袋も満たされたし、私達もう抜け出さない?」
「留空を置いて帰るの?」
「留空にシンデレラ気分をもう少し体験させてあげたいからね。私はもう飽きた」
確かに、私ももう疲れた。
「留空は陽乃に任せよう」
「そうだね」
私達は留空に『バイバイ』と手を振り、パーティー会場を抜け出し、レンタルショップに戻り私服に着替える。
帰り支度を初めていると、パタパタと足音がした。
走り込んで来たのはハイヒールを両手に持ったシンデレラだ。
「やだ、待ってよ。置いて行かないで」
美空がその姿にゲラゲラ笑ってる。
「バカね。ハイヒール持って来たの?片方置いて来ないと意味がないでしょう」
「えっ?片方置いて来るの?何処に?パーティー会場に?」
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