陽side
8
他校の不良達に電車内で絡まれ、思わず歯向かった。売られた喧嘩だ。俺は悪くない。
いつもの俺なら、すぐに殴りかかるところだが、喫煙の停学が解けたばかり。こんなことで退学にされたら割が合わねぇ。
怒りを堪え、グッと拳を握り我慢する。
次の駅で引き摺り降ろされた俺は、奴らに容赦なく殴られた。
我慢も限界だ。
退学なんてくそくらえ。
こいつらにナメられるくらいなら、退学になった方がマシだ。
反撃寸前、駅員に制止され奴らは蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。
あの制服は
俺の邪魔をした奴は誰なんだよ。
駅の構内には大勢の人が行き交う。顔を腫らし唇から血を流す俺を、好奇な目で見ている。
「なに見てんだよ」
通行人を睨み付けると、みんな汚物のように俺をサッと避けた。人の波が途切れ、プラットホームの柱に隠れるように立っていた一人の女と目が合う。
野暮ったい服装の女。膝下まであるスカート。白いブラウスに紺色のカーディガン。大きな黒い鞄に、ローヒールのパンプス。
その風貌から、OLに違いない。
「ムカつく」
その女と目が合った時、直感したんだ。こいつが駅員にチクったに違いないと。
大人なんてみんなクズだ。他人のことは見て見ぬ振り。
誰かがヤられていても、自ら助けたりしない。報復を恐れ傍観者になるだけ。
傍観者のくせに、正義感振りかざし駅員や警察にチクる。
学校に知れたら、俺が停学や退学に追い込まれることを、考えたりはしない。
ただ自己正義感を満たすために、助けた気になっている。
あの女がいい例だ。
怯えた眼差しで、俺を遠くから見ているだけ。
学校のセンコーと同じ、この世で一番ムカつくタイプ。
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