第12話:そして、ゲームは動きだす

 5月29日午前10時、奏歌市の別エリアで謎の事件が発生した。

「所詮、ゴッドオブアイドルは超有名アイドルを生み出すきっかけを作ったコピペ元にしか過ぎなかった……と言う事」

 青髪に白衣、右腕にはハンドランチャーを思わせるようなガジェット、左腕にもロングソードのガジェットを装備した人物が宣言している。

「フジョシや夢小説勢は本来であれば有名アイドルグループのBL小説を、堂々とアップしたいと考えている。しかし、それを実行すれば逆に炎上する事を恐れ、当たり障りのない作品で――」

 彼の訴えに耳を貸すような人物はいない。

 しかし、その宣言を妨害しようと一部の夢小説勢が彼に攻撃を仕掛けた所――。

「こちらから出向くまでもなかったか」

 何と、攻撃を防御する為に彼が使用したのはミュージックオブスパーダに登場するアンノウン……つまり、音ゲーで言うノーツだった。

 これにはギャラリーも驚くのだが、更に驚いたのは――。

【どういう事だ? あの人物はミュージックオブスパーダのデータを取りこんでいると言うのか?】

【ARゲームのデータは物故抜きが出来ないようにプロテクトがされていて、それを外すと重罪になると言うのをガイドラインでも見た事があるが…】

【重罪はデマだとしても、外部ツールの類をARゲームで使えばアカウント凍結は避けられない。奴は何を考えているのか?】

 ネット上でも、早速だが彼の使用した防御手段が話題になる。

 これが仮にガジェットのスキルだとしても、形状が敵サイドなのは狙いがあるのだろうか?

「こちらとしても都合よく現れてくれるとは思わなかったが……手間が省けた」

 彼が指をパチンと鳴らすと、突如としてCG出現演出と共に大型アンノウンまで姿を現した。

 しかも、この演出はミュージックオブスパーダと全く同じ。

「コンテンツを食い荒らし、文字通りの嵐であるお前達には早々に退場してもらおうか……こちらとしても、お前達の様なイレギュラーは不要だからな」

 大型アンノウンはドラゴンの形状をしており、そこから放たれるブレスは瞬時にしてフジョシ及び夢小説の連合軍を行動不能にした。

 その威力は一撃で連合軍を行動不能にするほどの威力だが、本来の攻撃力は中レベルである。

 つまり、このブレスにも対チートプログラムが組まれていた事になるのだが――その真相を知る人物は少ないだろう。

【明らかにオーバーキル】

【ここまでの事をする必要があったのか?】

【単純に超有名アイドルファンへの恨みをぶつけていた……逆恨みじゃね?】

【しかし、あいつの言っていたフジョシ勢が超有名アイドルの……と言う部分は本当なのか?】

【確かに小説サイトでは、二次創作の夢小説が無双しているサイトが存在している】

【本来は大手サイト等で堂々と展開し、小さなサイトは客が来ないという事で閉鎖が相次いでいるらしい】

【本来であれば創作小説がランクインするようなサイトで、二次創作の夢小説が無双しているのはこの為か】

【BL作品でない物をBLにしたような夢小説、つぶやきサイト風のSSがランキングを夢想するようになったと聞く】

【これらの状況をコンテンツを荒らすという意味でもアキバガーディアンが本格的に動いたという話だ】

 つぶやきサイトでは、彼の行動に関してやり過ぎと言う意見がある一方で、彼の行動を起こした理由に関しては納得をする声も存在していた。

 しばらくして、白衣の人物の姿も消えていた。一体、彼の目的は何だったのか?

 結局、その謎は誰にも解けないままに数時間も立たないうちに終息していた。



 その5分後、何者かの密告があったかのようにアキバガーディアンが姿を見せ、次々と倒れているフジョシ及び夢小説勢を連行していく。

 しばらくして、リーダーと思われるガーディアンに無線連絡が入り、そこで同じような事件が起きているという報告が次々と……。

「こちらとしては、一次創作勢に対するランキング入り妨害等を行っている勢力を排除できるのは良いかもしれないが……これでは超有名アイドルファンによる炎上行為と変わりがない」

 あるガーディアンは、一連の事件に関してぼやきとも言えるような一言をつぶやく。ガーディアンのメンバーの中には、同じような考え方をしている人物もいるが、それを言葉に出来ない現状も存在する。

「一次創作のコンテンツ作品から得た知識を踏まえ、それを二次創作ではなく全く別の一次創作として展開する……それはアカシックレコードにも記されており、それがWEB小説にとってもプラスになると言われていた」

「しかし、それを否定したのが……よりにもよって超有名アイドルの存在否定を行った大淀とは」

 他のガーディアンも気持ちは同じだった。全ては、大淀はるかの宣戦布告から始まったのかもしれない、と。



 5月28日、ある宣戦布告がネット上に流れたのは周知の事実であるのだが、それが大淀による物と判明したのは翌日の朝になってからだ。

《ゴッドオブアイドルのメッキがはがれた今、アイドルコンテンツがザルコンテンツである事は明白である。一部の2次元アイドルアニメやゲーム等で健闘している作品もあるが、3次元の方は芸能事務所の裏取引等も目立ち……》

《それに加えて、3次元アイドルの方は一部の投資家ファンの存在、税金の優遇、政治家との癒着、マスコミやテレビ番組の完全掌握……これでは、まるでアイドルが国会を動かしていると海外から誤解されてもおかしくない》

《そして、その3次元アイドル勢は……我々に対しても流血を伴う事件は起こしていないが、反対勢力を社会的に抹消し始めている》

《この状況はディストピアと変わりないと確信している。このような世界を生み出すきっかけとなった投資家ファン等を放置した我々にも責任はあり、この状況を放置してきた人間を個別に制裁しても超有名アイドル勢の思う壺だろう》

《ネットのまとめサイトでしか情報を収集せず、正式なソースを確認しないようになってきた情報弱者……そうした存在が超有名アイドルによる日本のディストピア化を放置する事になってしまったのだ》

《私は、超有名アイドルコンテンツによる全産業の掌握及び支配……率直に言えば、超有名アイドルによるディストピアから解放する為に戦う!》

 この他にも複数のつぶやきもあったのだが、それらは意図的に消されていた。まとめサイト勢に不必要として削られたのか、意図的に炎上させる為に削ったのかは定かではない。

 これらを見た炎上勢は、早速行動を開始して大淀を暗殺さえしようとも考えたが、そこまでの事態に発展すれば逆にまとめサイト勢の思うままだろう。

 そこで、別勢力を利用しようとまとめサイト勢はフジョシや夢小説勢等の超有名アイドルとは無縁と思われる勢力を引き合いに出し、魔女狩りを行うべきと宣言したのだ。

「まさか、アカシックレコードの内容をここまで曲解して、都合のよい部分だけを抜き取って記事にするとは……まとめサイトのレベルも落ちたか」

 一連のまとめを見て、ため息を漏らしたのは大和杏である。この文章をチェックしたのは早朝のニュースをチェックしている時。

「アガートラームも、ここまでの誤解を生むような発言主を放置してはいけないと考えているか」

 再び、大和に聞こえた幻聴は『ブラウザゲームにおける外部ツールと言える存在、悪意あるまとめサイト勢を撃破せよ』と言っているように思えた。



 5月29日午前11時、速報として一連の襲撃事件に関するニュースが流れた。

 しかし、犯人という報道はされておらず、倒されたフジョシ勢や夢小説勢の方が逮捕と言う事で、完全に立場が逆転している。

 本来であれば、白衣の人物が襲撃犯という扱いを受けるはずが……今回の対応でテレビ局には苦情の電話が殺到しているのに加え、クレームのつぶやきが拡散すると言う展開になっていた。

【白衣の人物が正義の味方? あちらこそが犯人です。どう考えてもマスコミの報道があべこべ】

【一部の夢小説勢が肖像権侵害で逮捕、20歳でもないのに実名報道で補導ではなく逮捕扱い……おかしいにもほどがある】

【実名と言うよりは、アレはハンドルネームであって本名ではない。紛らわしい名前だから実名報道と思われがちだが】

【あの白衣の人物、もしかするとゴッドオブアイドルの一件でも告発をしていた人物かもしれない】

【それ以外でも学会か何かで『超有名アイドル商法とタダ乗り便乗商法の規制法案』という……頭が痛くなりそうな事を言っていたな】

【タダ乗り便乗商法は、今に始まった事ではない。まとめサイトが裏で企業と提携している可能性を示唆した記事が話題になったり、芸能人がステマをしていた件も昔には問題視されていた】

【そうしたタダ乗り便乗で目立とうとするような勢力……具体的に言えば二次創作の夢小説勢等を駆逐しようと考えているのかもしれない】

【つまり、彼も一次創作勢の活動を守るために行動していると?】

【おそらく、あちらにとってはそう受け取られるのは不本意と言うべきだと思うが……】

【そうなると、大淀の発言を受けて便乗して動くバウンティハンターも同類なのか?】

 ネット上では、今回の襲撃事件を受けてさまざまな考えがつぶやきサイト等を通じて流れていた。

 その量は下手をすればサーバーがパンクするのではないか――と思う位に。

「これを罠と考えるか、それとも別の作戦と考えるか……」

 一連の騒動の大きさは、アキバガーディアンだけではなく一部の反超有名アイドル等にも伝わっていた。

 その中の一人、DJイナズマは今回の事件に関してはスルーを考えていたのだが……。

「あの時に書いたアレを見た人物がいるのか、あるいはアカシックレコードを参考にして――!?」

 イナズマは何か思い当たる節があり、改めて大淀の宣戦布告を見返す事にした。そして、ある記述が存在した事で何かの確信を得た。



 同日午前11時30分、今回の件とは関係なくミュージックオブスパーダをプレイする人物もいた。

「スコアが思ったように伸びなくなっている。やはり、ガジェットに依存するだけではなく技術も必要なのか」

 プレイ終了後、今回のスコアに満足のいかなかった山口飛龍は、他プレイヤー視線で見た自分のプレイ動画を見ていた。

 第3者としての視線は、様々な意味でもスキルを伸ばす為の研究材料になる。それは一連のプレイ動画や実況動画の需要を考えれば、確定的に明らかとも言える。

 格闘ゲームやFPS、TPS等の様なイースポーツにも選ばれた作品は需要があり、プロゲーマー目当てで動画を見るユーザーも多い。

 解説動画に関してもアクションゲーム等のジャンルでは、攻略本では分かりづらいであろう部分も動画ならば動きも交えて解説している為に需要自体は存在する。

 実況動画の方は、実況をしている人物を題材にした夢小説等もあるのだが……一定の需要はあるだろうか。

 当時はプレイ動画に関しても特定ジャンルに関しては投稿不可、その他にも色々な大人の事情があった。

 しかし、格闘ゲームの動画重要や時代の流れ等でプレイ動画にもある程度は環境が整いつつある。

 一方で、こちらでもタダ乗り便乗系勢力は存在し、そうした勢力がコンテンツの食いつぶしと言う事を行う結果……超有名アイドルのディストピアという単語が生まれた可能性も否定できない。

 果たして――正しいのはどちらなのか? さまざまな考察を行うまとめサイトの存在が、こうした議論に拍車をかける。

「どちらにしても、まずは――?」

 動画を一通りチェックした後、山口はニュース速報に気付いた。襲撃事件の犯人が発見されたという事なのだが……。

「これは一体、どういう事なのか」

 山口は、襲撃事件の犯人として映像に表示されていたのがバウンティハンターだった事に驚きを隠せなかった。

「バウンティハンターには便乗犯も存在する。しかし、あのデザインは何か別の狙いがあるのか、それとも……」

 悩んでも始まらないと判断した山口は、再びプレイする為に行列の最後に並ぶ。現在は10人待ちと言ったところだろうか。



 同日午前12時、一連の事件は思わぬ方向へと発展した。何と、ビスマルクと例の青髪の人物がバトルを展開していたのである。

「まさか、お前が一連の超有名アイドルの芸能事務所やゴッドオブアイドル関連の会社を潰していたとは――」

 ビスマルクは、以前に加賀ミヅキから手渡された資料を思い出していた。そこには、イースポーツ系勢力以外にも、反超有名アイドル勢力としてブラックリストに入った青髪の人物もリスト対象内だったからだ。

「タダ乗り便乗で楽に儲けようと言う勢力は……炎上商法等に手を貸す事になると分かっていない。だからこそ、ゴッドオブアイドルは潰すべきと判断したまで」

 白衣の人物はタブレット端末の操作を行い、バウンティハンターと同じデザインのARガジェットを装着する。唯一の違いがあれば、カラーリングが黒と言う事のみ。

「だからと言って、バウンティハンターの名をかたるとは……やっている事に矛盾を感じないのか?」

 ビスマルクの反論に対し、彼は無言で攻撃を行う。問答無用と言う事なのか、それともその部分には答えないという事なのか?

「貴様も所詮は自分で否定している炎上商法やタダ乗り便乗勢力と同じと言う事――」

「黙れ! 自分の行っている事は私利私欲や個人的欲望を満たすだけの……自己満足を求めるようなネット住民とは違う」

「違わない! 貴様が行っている事は……毒を以て毒を制すと言う事なのかもしれないが」

「お前はやり過ぎた……とでも言いたいのか、ビスマルク!」

 白衣の人物の一言を聞き、ビスマルクは正体を確信した。そして、肩の連装砲を初めとした武装で威嚇を行う。

「私の名前を知っているという事は……アキバガーディアンか、あるいは別の反超有名アイドル勢力と言う事か?」

「反超有名アイドルだったら、何だと言う?」

 2人のバトルは、攻撃のほとんどが威嚇であり、攻撃を命中させる気は全くないように思える。一体、何が目的なのか?

「貴様、メビウス提督――」

「その名を口にするな! 提督の名は反超有名アイドルを掲げてからは捨てたも同然――」

 メビウス提督と呼ばれた人物は動揺をし、攻撃を外すつもりがビスマルクのシールドに命中する。

「どちらにしても、お前のやっている事は間違っている。この行動に理想等は存在しない。あるのは、コンテンツ産業を駄目にした政府や芸能事務所に対する恨みだけだ」

 ビスマルクの言葉にメビウス提督は反論も出来ない。

 そして、しばらくするとアキバガーディアンが駆けつけてきたのである。



 5月29日午前12時、メビウス提督とビスマルクがバトルを展開している一方で、ある人物が山口飛龍のプレイに乱入してきたのだ。

 ミュージックオブスパーダ自体は乱入システムも導入されており、特に制限がされている事はない。

「山口飛龍……聞き覚えがあると思ったら、あのコンテストに入賞した作曲家か」

 山口の事をミュージックオブスパーダのプレイヤーとしてではなく、本来の職種である作曲家として見ている事から、あの男性は超有名アイドル絡みの乱入者と言う可能性も考えた。

「貴方は一体――」

 疑問に思った山口は質問をするのだが、それに回答する前に彼はARガジェットのハンマーを構える。

 その形状はハンマーと言うよりは、いわゆるハルバートと言えるような形状にも見えるが――この人物は本気らしい。

「こちらとしては戦闘は苦手だからな……ここでの『ルール』でおまえを倒す事にするよ」

「倒すという事は、超有名アイドルファン?」

「そっちの勢力とは思われたくないが、こちらも過去にあのコンテストに参加していてね――」

「コンテスト参加者であれば、楽曲勝負と言う事も可能でしょう。どうして、これを選んだのですか」

「簡単なことだ。楽曲勝負を挑んだとしても――山口飛龍と言えば、同人分野でも名前が広まっている有名人。こちらの技術で勝てるわけがない」

 彼の方は名前を自分から名乗るつもりはなく、プレイヤーネームに登録されているファントムも偽名だろう。

「1曲限定だが、始めようか。曲の方は、お前の方に任せよう。下手に仕組まれていると思われたくないからな」

 ファントムは選曲権を山口に譲った。彼のランクも山口と同様に中堅ランクであり、実力差はほぼ互角だろう。

 そして、10秒程の思考をした結果、クラシックアレンジのジャンルから革命を選曲した。

 ミュージックオブスパーダの場合、クラシックアレンジとオリジナル楽曲ではレベル差に開きがあり過ぎて、選曲レベルも半端ない。

「革命か。それもよいだろう」

 ファントムの方は何かの含みを残したような笑みを浮かべ、ARガジェットのハンマーをバズーカ砲へと変形させる。

 どうやら2段階変形のガジェットのようだ。近接にも遠距離にも対応していると言う事では、有利にも見えるのだが――。



 同刻、バウンティハンターが偽者のバウンティハンターとバトルを展開していた。

 これに関してはネット上でも話題になっていたが、大きく報道される事はなかったという。

「メビウス提督が釣れると思っていたが、まさかお前が来るとは思わなかった」

『どういう事だ?』

 本物の方は偽物がメビウス提督の名前を知っていた事に疑問を感じたが、それ以上に自分をお呼びではなかった事にも驚いた。

 どうして、バウンティハンターの装備を偽装してまでもメビウス提督をおびき寄せようとしたのか?

 しかし、バウンティハンターの疑問への答えが出ることなく、彼は本物に向けて全力射撃を行う。

『偽物のパワーで、こちらのガジェットを量が出来ると思ったのか!?』

 バウンティハンターのバリアが展開され、射撃は全て無効化された。ダメージに関しても0ではないが、ほぼ無傷に近い。

「馬鹿な……これだけの能力、このARゲームで発揮したらチートと扱われるはずだ!」

 偽物の発言は、自分の装備では勝ち目がない事に対しての苛立ちなのかもしれないが……。

『その言葉をそっくり返す。このARゲームには、チート及び外部ツールの起動を強制停止するシステムが組み込まれている。つまり――』

 バウンティハンターは次の瞬間にビームブラスターを展開、そのビームは偽物のバウンティハンターのARギアを瞬時に無効化したのである。

 その結果として、偽物の使用していたARギアは外部ツール。つまり、運営から禁止されているガジェットである。

「馬鹿な……ゴッドオブアイドルの存在は絶対のはずだ! 彼女たち無くして、日本の経済は――」

 結局、一斉逮捕されたと思われていたゴッドオブアイドルのスタッフは一人逃走していたという事実が判明、警察がザルだったという事も表面化する事になった。

 アキバガーディアンが一部メンバーを警察に引き渡したのは、向こう側の要求があったからこそなのだが。

 警察内部にも芸能事務所に協力するような勢力がいるのではないか、というのは別のネット上で浮上した噂でも言及されている。

「ツールブレイカー、スパーダの運営や南雲はそう呼んでいる……特殊ガジェットか」

 加賀ミヅキはバイザーを外し、一部勢力が使用しているツールブレイカーの存在に関して思う部分があった。

 しかし、自分が使用しているのはツールブレイカーではない。もしかすると、大和杏が使用しているアガートラームが……。



 5分後、ビスマルクとメビウス提督が戦っていた場所、そこにはアキバガーディアンが姿を現した。

「一体どういう事だ?」

 慌てているのはメビウス提督の方である。これは、どういう事なのか?

「先ほど、ゴッドオブアイドルの逃走中だったスタッフを逮捕したという情報を――」

 ガーディアンの報告を聞いて驚いたのは、ビスマルクの方である。まさかとは思うが……。

「そうか。最後の一人も確保したか……これで、あの宣言を覆す事が出来る。こちらが一芝居仕掛けたのも無駄ではなかったか」

 メビウス提督の口から語られたのは、ある宣言を阻止する為に一芝居をうったという事らしい。

「宣言? 一体、何の宣言を阻止しようとしたの?」

「阻止しようとしたのは、あの宣言しかないだろう」

「あの宣言? フジョシ勢や夢小説勢の魔女狩りをしようとした超有名アイドルファンの――」

「あれは副産物だ。魔女狩りを考えた勢力は既に鎮圧済み」

「じゃあ、もしかして――?」

 ビスマルクはメビウス提督の言う宣言に対し、ある疑問を抱いた。アカシックレコードに記されている宣言であれば、他の勢力が悪用してもおかしくはないからだ。

 そして、ビスマルクはアカシックレコードにない宣言を考え、結論に至ったのが……。

「大淀はるかの宣戦布告とも言える、あの宣言だ。超有名アイドルのディストピア、それは向こうの被害妄想だ。悪質な超有名アイドル投資家は存在するが……」

 しばらくすると、メビウス提督とアキバガーディアンは撤収、残されたのはビスマルクのみとなった。

「やはり、あのまとめサイトで意図的に消された部分……そこを解読できなければ、他にも別の勢力がミュージックオブスパーダを利用して便乗活動をする事になる」

 ビスマルクの方も別の場所へ移動し、警察が到着した頃には誰もいないという状況になっていた。

 結局、警察は迷惑通報をした人物を書類送検し、そこからアイドルグループの夢小説サイトの運営が明らかとなり、この人物は肖像権を含めた権利侵害で逮捕される。

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