俺と彼女はこうして知り合った01
──そう言えば。と、下校中。緩い下り坂で、まだ帰るな。と言っているかのような向かい風の中。俺は、無理矢理足を進めながら過去を思い出す。
俺は、昔っから夢については正夢が多い。と言う事。しかし、結局それも、人に自慢できる話でも無いし。尚且つ、堂々と人に話せる内容でもない。寧ろ、話した所で「……へぇ。凄いじゃん」と、遠い目をしながら適当に話を合わせてくるぐらいだろ。
──まって、想像したら。やたら辛い。何この宿命。人に話せない宿命とか……でも、ちょっとかっこいい──にひっ
「……うわ、あの人。独りで笑ってるよ……」
「まじでっ? 怖いね……」
……ひゃっ……。何ですか、もはや、ヒソヒソ話でも無いんですが。そんな堂々と「生理的に受け付けられません」アピールされたら逆に清々しいものですね!
最近の女の子は本当に怖い。いや、昔ながらの女の子も本当に怖いけど。
「あれっ。俺、今何の答えを過去から導こうと……俺が独りで笑って気持ち悪い理由についてだっけ……って、ちがぁぁぁあう!!」
──あ。……あ。
羞恥と言うスポットライト。それに自ら浴びた俺は下卑た者を見る、いや。物をみる視線から逃げる様に坂を下った。
だって。気持ち悪いとか言われたら辛いじゃん。叫びたいじゃん……。だって、俺気持ち悪くないもん。彼女だっていたことあるモン……遠い日の懐かしい黄昏時に……。
そうして、ものの十五分程度で着いた俺の家は、優しくユックリと扉が開き。そして、その先には、可愛い幼馴染みが……っ!!
「ただいまー」
居るはずもなく。俺の声は朝同様に虚しく、薄暗い廊下に響いた。
「そう言えば、あの子は何て名前なんだろーか」
それは、俺を凍てつかせるような冷たい視線を送った綺麗な女性。
何処と無く違和感を感じた女性。あの違和感は一体何だったのだろうか。
正直な所。その違和感については、初めてのような気がしないでもない。
彼女自体は初めて。にも関わらず、その、初めてでは無い違和感を感じると言うのも変な話だ。
「……考えすぎかなっ」
俺は、そう思う事にした。
今朝の正夢同様に、また“ふ”とした時に思い出すと確信して。
──取り敢えず。
俺は、リビングに見向きもせずに。勢いある、足取りで二階にある、自分の部屋に向かった。
と言うか、リビングに居てもやることがない。
逆に、自分の部屋ではやる事がいっぱいあるのだ。
アニメ観たり、本を読んだり。と、俺は、多忙。
俺は、正直オタクと言う部類に入る。それを決して、俺は、恥だと思わない。
美女が好き・幼女が好き・美少女・獣耳っ娘・かっこいい主人公・ハーレム展開、等などが大好きだ(ただし、二次元に限る) だが、そんな俺を世間は白い目で見る。故に、中学時代の事件に繋がりもした。
「本当に、三次元はクソばかりだ」
三次元の偏見について、訴えについて論じろ。と言われたら、相当な原稿数、書ける気がしてならない。
「…………」
何やら、外が騒がしい。それは、危機感を覚え、高く、そして耳に残る音。
「救急車か……。珍しい」
だが、音が鳴り止んだ場所は意外と近いようだ。俺は、好奇心とは別の感情。上手くゆえないが、気になり玄関をサンダルで飛び出す。
──っ!!
騒がしい野次馬の中。微かに見えた、赤く染まる肌から覗かせる苦悶に満ちた表情もなく。ただ、目を瞑る女性。
だが、それだけで答え合わせは十分で。その、整い過ぎた顔付きは俺の記憶の中では充分過ぎる程だった。
「……隣に座っていた、あの子……」
名前も、何も知らない顔見知りが、手を担架から“ダラン”とさせ。その指先から滴る命の結晶が生々しいさを隠すこと無く。出し惜しみする事なく遠とき歌を“ぴちゃぴちゃ”と奏でていた。
その光景に、俺は、ただ何も出来るわけもなく。ただ、呆然と野次馬の中で、同じ野次馬として目で追うことしか出来ずにいる。
「……何て、日なんだ……」
「──ぅう。そーですよねえ……」
あれ、何だ、この幼い女の子。
と言うか、さながら白い兎のようなコスプレ。
恥ずかしくないのか?
「……と言うか、君。そんな格好してたら寒くないの??」
そう言うと、目の前の幼女は、少し残念そうな赴きを、眉を八の字に顰め、目を伏せ作り上げ。そして、溜息混じりに小さい口を開いた。
「むぅ。やっぱり、まだ夢の世界との記憶癒着は出来ていないようですー。ラビは、何回もする自己紹介に些か嫌悪を抱き始めたのですー」
「夢の世界? 記憶の癒着?? 君は、一体何を言っているんだ??」
俺には、まったく理解の出来ない言葉だった。
「雄大さんは、夢の世界に干渉出来る資質を持っているのです。それが、正夢……予知夢の頻繁を物語っているのですー」
「まってくれ!! 話の意図が全く読めないのだが……。予知夢がなんだって??」
すると、幼女は可愛いうさ耳を折り曲げ頭を抱え蹲る。
俺は、その縮こまる姿に可愛さを覚えつつ。ちょっと、強めに言ってしまった事を反省しつつ、膝を折った。
「ごめん……。少し強く言い過ぎたね。一体どーゆことなのかな??」
出来る限り、優しい口調で諭すと幼女は、潤んだ瞳で俺を写す。
「ラビこそ、ごめんなさいです……。アリス様から言われている内容しか分からないのです……」
ラビ? この子の名前は、ラビというのか? それにアリスとか。この、兎の様な幼女、もといラビと重なり。さながら不思議の国のアリスだ。
「……そうか……」
そうか、俺にはそれしか、言う事ができない。
知ったかをしようにも。未知の話過ぎて、訳が分からないのが事実。
「──ぁあ……また、時間なのです……」
そう、ラビは口にすると、小さい手では余り余る金色の懐中時計の音を鳴らしながら姿を消した。
一体、彼女は何を伝えようとしていたのだろうか。一体どんな意図があり俺に接してきたのだろうか。それとも、これも。この話自体も夢の一端なのだろうか。
自分の夢に、疑問を抱くのも少々おかしな話だが。しかし、これが夢で良かった。そう、それだけは事実。あんな、悪夢のような話が現実に起こらずにすんだのだから。
いっ──
「ってぇ!! なんなんだ……ょ……ぉ」
雑とも言える痛みで堪らず立ち上がる。すると、目の前には、鋭い眼光で俺を穿つ担任。数多の視線が痛々しく突き刺さった。
「長門雄大。入学式当日に居眠りなんて、上等だな?? 罰を考えておく」
弁明の余地無く。担任である志紀先生は不適な笑を浮かべる。いや、この場合。不適ではなく、志紀先生にとっては適切な笑なのかもしれないが……その笑みに俺は、嫌な予感しかする事は出来なかった。
「そんな、酷い」とも、口にすること無くただ、頷き座る俺に、志紀先生は満足したのだろう。再び話を始めた。
「──はぁ。貴方、良く。そんな、当日から居眠り出来るわね。逆に感心せざるを得ないわ」
毒々しい言い方に若干、胸を痛ませながら俺は、再び、頷く。
だって! 言い返せる言葉ないんだもん!!
と言うよりも……何か感じる違和感。その事で、頭が一杯だったのも事実。
うる覚えな夢の中。何か、大切な何かを忘れているような気がしてならなかったのだ。
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