あめとおにぎり

@zero2869

プロローグ

腰に鈍痛

口の中は鉄と砂の味

目を薄っすら開けると、今しがた俺を地に突き落とした鋼鉄の棒が睨む

助けてと声にならない声で呻いてみせる

視界がボヤけ、グニャリと曲がる


「……だいじょーぶ?立てる……?」


白いワンピースの少女が心配そうに手を差し伸べた


「…………」


女の子の手なんか借りたくない。

力を振り絞り顔を拭い1人で起き上がってみせたが、再び鈍痛が走りへなりと座り込んでしまった。

恥ずかしさと悔しさと苛立ちが身体を巡る


「……笑ったらいいだろ!ねんちゅうさんにもなっててつぼうから落ちたんだから!」


もう涙袋は寸裂間際だった。

すると、少女は俺の横にしゃがみ込み、小さなおにぎりを差し出した。


「いたいのなくなるまほうのおにぎり、いる?」


小さなプライドは痛みでもう既に無くなっていた。


「…………ん…」


一口含むと涙が一粒、二口含むと涕泣してしまい、必死に止めようとしたけど、それも徒爾に終わった。


「わわっ、なかないで!て、にぎ

ってあげるから!それともまだいたい?

おにぎり、おいしくなかった?」


「おいしい、おいしいよ……なみだ、とまんないよぉ………」


懇切に握られた僕の手はとても優しい温もりに包まれた。

桜が咲き誇る公園に二人、

そして僕は小さな決意をする。


「……僕っ!!もし君がかなしくなったとき、いたいのなくなるような、えがおになるようなおにぎりをつくってあげるから!!!だから、だから…ともだちになってくれる……?」


少女は一瞬キョトンとしたが、クスッと笑い、柔和な表情で言う、


「よろしくね、なきむしくん♪」


春の風が二人を包み、花弁の舞踏会が始まった。

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