第11話 雨上がりのトキメキ

朝の雨が嘘のように晴れた午後。猫は窓辺で日向ぼっこ。飼い主は新型コロナワクチンの3回目の接種の予約をした。大型ショッピングセンター近くの会場である。


大型ショッピングセンターでの接種はありがたい。ついでに買い物もできる。今の時期なら早目の春物セールに出会える可能性もあるから出かけるのが楽しみだ。幾つになっても洋服を選ぶという行為にはトキメキがある。


雨が降ると出来なくなることがある。段ボールを資源ごみに出すというようなこともその一例だ。


自治体によってごみ出しルールは様々だが、新しい住まいの周辺にはあちこちに段ボールの回収スポットがある。引っ越してきてから五月雨式に色々なものを購入して新居を整えた私は、やっと重い腰を上げて段ボールの処分をすることにした。


目指したのは車で片道5分のスーパーマーケットの駐車場だ。


回収スポット近くへ車を寄せ、中から段ボールを取り出して回収ボックスへと入れること数回。やってみると段ボールの処分は、あっという間に終わる。


しかも、「捨てればゴミ、活かせば資源」という標語を目にして、良いことをしたと気分スッキリ。単細胞の私は足取り軽く店内へと入り、何か春野菜のいいモノでもあれば買おうかと赤いかごを手に歩き始めた。


みると、スナップエンドウの緑が美しい。ポップには夕方から使える30円引きのクーポン。私は控えめなお値段のパックをかごに入れた。


私は自宅から歩いて5分の店舗がお気に入りだ。買い物に行くということは、歩数を稼ぐということだ。歩数が稼げればアプリのポイントが付いて値引きクーポンを受け取れる。健康にもよくてお財布にも優しい。そんなポイント活動が私は好きだ。


そんなわけで、この店まで車で来たのは、転居してから初めての事だった。


お店の中をぐるりと歩くと、片隅のワゴンに私が愛飲しているインスタントコーヒーが山積みになっていた。底値で698円の商品を5%オフの日に購入している。それが400円のお値打ち価格で販売されているのだ。


賞味期限が短いのかと見てみると、今年の秋の印字。強いて言えば紙のケースが少しばかり凹んでいるようないないような。

私は少し迷って、3つほど買い物かごへ入れた。298円の3個ぶんだから、およそ900円近くのお買い得に、つい胸がときめく。


駐車場では雨上がりでピカピカの愛車が待っていた。雨上がりの午後はいい。学校帰りに傘を振り回しながらふざけて帰る子供たちの笑い声も、すごくいい。こんな小さなトキメキにウキウキする単細胞な私もきっと、すごくいい。








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