報告

 ミチルは、光夫と真来と共に、学校の応接室にいた。三人で並んでソファに座り、対面にはミチルの担任の菜畑、やけに目付きが悪い教頭、恰幅のいい校長が座っていた。

 唐突にミチルが噴き出した。


「何が可笑しいんですか?」


 教頭が苛立たしげに言った。


「いやだって、デジャヴだなって思ったら、お父さんお母さんに話した時と状況が同じなんですよ?」


 ミチルはケラケラ笑いながら言った。

 教頭がミチルを睨み付けたが、ミチルは特に反応を示さなかった。教頭の額に青筋が浮かび始める。


「それで、三橋みつはし、いつから魔法少女になったんだ?」


 少しだけ冷や汗をかいている菜畑が言った。


「えっと、終業式の日からですね。『アニバーサリー』でクモビーストが暴れた日でしたので」


 ミチルは笑う事を止めて答えた。


「そこにいた、と」

「はい。で、急に選ばれた感じでしたね」

「他人事みたいに言うんじゃないっ!!」


 突然、教頭が激怒した。


「……いや、他人事じゃないんですけど」


 ミチルが少しだけ驚いて言った。


「何が魔法少女だ! 君みたいな子どもがあんな滅茶苦茶な力を持ってみろ? どうせすぐに大変な事が起こるぞ!」


 教頭が自信満々にミチルを指し、吠えるように言った。


「…………は? いや、ちょっと意味がわからないんですけど。というか、一昨日行われた『魔法機構』の会議で別の場所で戦ってる子と話したんですけど、皆マトモでしたよ?」


 ミチルが呆れた様子で言った。


「あの、言っておきますけど、私だってちゃんと『皆を守る』って理由があって戦ってるんですからね?」


 ミチルがそう言うと、教頭が再び何か言おうと口を開こうとして、


「ほう」


 それまで黙っていた校長が口を開いたので、慌てて口を閉じた。


「『皆を守る』、か。充分に立派だと思う。では、一つ聞いてみたいのだが、今みたいに自分を否定されても守るのか?」

「…………今に始まった事じゃないので」


 校長の問いに、ミチルは苦笑しながら答えた。


「……そうか。深くは聞かないよ。とりあえず電話で聞いた変身アイテムは学校に持ち込んでいい。ただし他の生徒には出来る限り秘密にしておきなさい。色々な形でしがらみが生まれるだろうから」


 校長は微笑みながら言った。


「そうですか。良かった、許可取れなくても持ってくるつもりでしたので……」


 ミチルはそう言うと、ソファの脇に置いていたリュックの中から『エボルブレスレット』を取り出した。


「……ほお」


 『エボルブレスレット』を見た校長が嘆息を漏らした。


「あ、すいません、勝手に持ち込んで……」

「ああいや、すまない、違うんだ。ただ、私もまだ子どもだなと思ってね」


 校長は肩をすくめて言った。


「はい?」

「いや、子どもの頃からやっている巨大ヒーローものの特撮で、そういうブレスレットを身に付けているヒーローがいてね。それは槍とか盾になったりするのか?」

「えっと、変形はしませんよ?」


 ミチルは少し考えてから答えた。


「そうか、それは、少しだけ残念だな……」


 校長が残念そうに言った。


「?」


 ミチルは不思議そうに首を傾げた。

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