始末

 男女の怪人が出現した別荘から北に三キロメートル離れた、雑木林の中。

 完全な闇に包まれた中で、四つの光が動いていた。

 片方は、黄色く濁った光。

 もう片方は、紅い光。

 光はそれぞれ一対で、黄色く濁った光を、紅い光が追っていた。

 黄色く濁った光は追い詰められ、雑木林の中から月明かりの下に出た。

 現れたのは、ネズミビーストだった。光の正体は、ネズミビーストの両目だった。


――Particle feather!――


 森の奥から奇妙な低い音が鳴り響き、黄金色の光刃が飛翔し、ネズミビーストの左足首を切断した。

 ネズミビーストは、悲鳴にも聞こえる濁った叫び声を上げた。

 直後、森の奥から紅い光が現れ、月明かりの下に姿を現した。

 やや丈の短い赤いワンピースを着て黒いズボンを履き、剃刀のような刃が伸びた装甲のような黒い長手袋を身に付け、剃刀のような刃が伸びた黒いブーツを穿いた少女――変身した舞だった。

 舞は短く息を吸うと、ネズミビーストに駆け寄り、左手でネズミビーストの頭を掴み、握り潰した。

 ネズミビーストは、黒いゲル状の物質に変化した。


「……はあ……」


 舞は溜め息をついて、月を見上げた。


「これで大体二時間半……。心咲、怒ってるだろうなあ……」


 舞はそう言って前を向くと、もう一度溜め息をついて、下山するために走り出した。

 変身は、解かなかった。

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