第六話 ビーストキラー

邂逅

「……ふう、消火かんりょー、っと。後は消えてない火はないよね?」


 舞は、気の抜けきった声色で言って、ベージュのズボンのポケットからビーフジャーキーを取り出してかじり始めた。

 丁度その時、スローレイダー隊員が走ってきた。


「…………ありゃ?」


 舞はビーフジャーキーを飲み込んでから、間抜けな声を漏らした。


「…………君は誰だ?」


 スローレイダー隊員の一人であるエドが舞に言った。


「あーっと、ボヤ騒ぎになりかけてたので、消火活動してました」


 舞は、嘘ではないが本当でもないように言った。


「君がやったのか?」

「や、えーっと、私といいますか……不可抗力といいますか……」


 舞は軽く頭を掻きながらブツブツと言って、


「…………あれ、三橋みつはしさんじゃない! そっか、部隊に入ったんだね。その戦闘服、似合ってるよ」


 スローレイダー隊員の中にミチルを見つけて、途端に饒舌になって言った。


「あ、は、はあ……?」


 ミチルは、半ばたじたじになりながら言った。


「……ちょっと待った」


 そこに、エドが割って入った。


「どうして君は俺達が部隊だって知っているんだ?」

「…………あ」


 舞は、口を押さえた。


「え、い、いやあ、そういう服装だし、マジの人達かなあ、なんて……やっぱ誤魔化せないか」


 舞は、肩を落としながら言って、


今日こんにちは。…………私は、ザ・ネクストです」


 軽く微笑みながら正直に言った。


「なっ……!?」


 スローレイダー隊員全員が驚いて、慌てて拳銃を抜こうとした。


「あ、いや、敵対する気とか更々ないんで、銃抜かないでくださいお願いします……」


 舞も慌てて止めに入った。


「……どうしてここにいるんだ?」


 エドは拳銃を抜かなかったが、グリップに手をかけた状態で舞に話しかけた。


「…………え、ここにコウモリビーストが二体いて、こっちから潰しに来ただけですけど……?」


 舞は、キョトンとした表情で言った。


「…………は?」

「え?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 エドはそう言って、ヘルメットのインカムを触った。


「……指令室?」

『…………ごめんなさい、コウモリビースト、二体いたみたい』


 ミリヤが、申し訳なさそうに言った。


「ちょっ、ネクストいなかったら俺達見逃してましたよ!?」

『…………てへっ?』

「いや『てへっ?』じゃないですよもう!!」


 エドはインカムに向かって怒鳴った。


「あのー、ちょっとー? もう帰っていいですかー?」

「あ、いや……、そうだな、ちょっと一緒に来てくれないか?」


 エドが気まずそうに言った。


「え、いや、なんですけど……」


 舞は、胸元を隠しながら後ずさった。


『…………あー、ごめんなさい、何としても連れて帰ってって上からお達しが届いたわ』


 ミリヤの通信が舞の地獄耳に届いて、


「えっ、ちょっ、何すんですか!? まさかあんな事やこんな事を……!?」


 舞は心咲との会話を思い出しながらおどけた調子で言った。


『えっと、テイザーガン使っていいから連行して。千載一遇のチャンスだから』

「りょ、了解……」


 石堀が呟いて、拳銃を抜いて、テイザーガンモードに変更して構えて撃った。


「がっ!?」


 舞は一瞬震えて、気を失った。

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