魔法少女Customs

秋空 脱兎

プロローグ

とある山奥、山小屋にて

 どこかの山の山奥の小屋で、ピラニアにも蜥蜴にも見える怪人が、遠ざかっていく誘拐犯の男の悲鳴を聞きながら立ち尽くしていた。


 怪人の足元には、誘拐犯の男に犯される寸前だった、全裸にされた十代前半の少女が倒れている。側にはサバイバルナイフが転がり、少女は、虚ろな目と表情で怪人を見ていた。


「……大丈夫?」


 怪人は、少女に声をかけた。その声は、歪んだ化け物の声そのものだった。


「…………」


 少女は虚ろな目と表情のまま、ゆっくりと首を横に振った。


「…………そう。……やっぱり」


 怪人が少女の腹を見ると、サバイバルナイフが深々と刺され、抜かれた跡があり、そこから、鮮血がとめどなく溢れていた。


「……ごめんね、助けられなくて」


 怪人は悲しげに謝り、化け物の姿から人間の姿に変わった。

 その瞬間、人間になった怪人を見ていた虚ろな目が見開かれた。


「…………き……て」


 少女が、掠れた声で何かを言った。


「…………何?」

「私の、か、わり、に、生きて……。わ、たし、に、なっ……て……」


 少女はそう言うと、化け物に手を伸ばそうとした。


「……っ!」


 化け物はそれに気付いて、屈んで手を伸ばそうとしたが、


「……あ……」


 その手が届く前に、少女は、事切れてしまった。


「…………。くそっ……!」


 化け物は、拳を床に打ち付けた。床が砕けた。



 それから暫くして、化け物は立ち上がった。


「……私の代わりに生きて、か。……そんなに似てるのかな、わたし」


 赤く輝く瞳で少女だったものを見下ろして、そう呟いた。


 その日から、人間は、少女の代役になった。

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