第五幕『密輸の品』
ミイラの解体と、回収した積荷を両海賊で分け合う作業を眺めていると、船内から戻った副船長のエトワールが渋い顔をして俺の肩を叩いた。
「ラース、ちょっとお話が」
「フナムシでも噛み潰したみたいな顔してるけど、なに?」
「アナタの裁量とレヴくんの情報、どちらも信じて居ますが、何か私に伝え忘れた事があったとか、そう言う自己申告を今の内に受け付けたいと思うのですが」
「……またそう言う、回りくどい言い方、止めてくんない?」
思い当たる節はないと?と再度のエトワールからの質問に、何も思い当たらない、と正直に答える。俺は何時だって正直だよ?ゴホン。
「なら、この船の積荷について、事前に情報は掴んでいましたよね」
「そうだよ?アウリッツに輸出する宝石の原石だろ?あとコスタ織物の絨毯と、蒼林の食器類」
「では、本当にこれは想定外だと」
「何だよ一体!何があったってんだよ、早く案内しろ!」
クダクダと説教を聞く時間は無いんだっつーの!しっし、と払うようにエトワールに案内させて船倉へと潜る。
「ったぁく、ちょっと位予定外の物だって積んでるだろうが……イチイチそんなんで」
薄暗い船倉に下りて、そこにあった異様な光景に俺は言葉を飲み込んだ。
削り出された一枚水晶の板で作られているのだろうか。とにかく透明度がとんでもなく高いそれで作られた、箱だ。巨大な箱だ。角の部分には金で豪華な細工が施され、大振りの宝石も嵌め込まれている。それだけで相当な価値のありそうな箱だ。大きさは、大人が折り重なって入れば五・六人は入れそうな大きさだ。船倉の三分の一はそれで埋まっている。
その箱の仰々しさよりも、更に俺の度肝を抜いたのはその中身。金色の髪、白い肌、青い大きな瞳、たわわな乳房、くびれたウエストと張り出た腰。その先に続く、淡い色の翠の尾鰭!
「おいぃ!」
思わず俺はエトワールの背中を叩いた。
「何で人魚が乗ってんだよ!」
「だから、こっちが聞きたいんです。この人魚はゴーンブールの南東の海域に生息する希少種ですよ、恐らく」
「それって最近何とかって条約で輸出入禁止されたヤツだろ?」
おい密輸かよ!上で呆けてやがるこの商船の船長叩き起こして尋問しろ!
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