第三幕『海賊は考える』
大小様々な海賊が跋扈する大海で、商船たちはせめてもの抵抗に船団を組んで航海する、古来からの航海術に立ち返った。小賢しいと言えば賢しいが、そうなれば海賊もそれなりの手段を執るだろうと想像が行き着かなかったのは、やはりその程度の物しか奴らは考えられないと言う事だ。自分の命、自分の富、自分の保身の為に疑心暗鬼の商船団が海を行く。
付け刃の商船団と違い、海賊たちは掟によってその結束を図る事を知っている。取り分をきちんと決め、役割を決め、作戦を立てる。そうして行われる襲撃は、海軍の作戦の様に統率の取れた物に昇華する。
さあ、ヴィカーリオ海賊団の出撃だ!今日の獲物を狩りに行こうぜ!
副船長エトワールが見張り台の上からその銃を構える。
「イベリーゴ、フールモサジターリオ!」
失われた超文明の遺産、十二星座の名を冠した強力な武器。海賊稼業の中で手に入れたお宝。それを構え、先を行く商船団の様子を伺い、そして超遠距離からの狙撃で商船団の見張りを的確に始末していく。
「まったく、何て物を振り回してるんだか」
「あげませんよ」
「あんな化け物じみたブツは、流石のアタシらんところでも扱えないよ」
狙撃の様子を見ていた白魚海賊団船長の女海賊オリガが、砲撃長メーヴォを相手に何とも楽しそうな顔で話している。副砲撃長カルムがエトワールの狙撃に合わせてカウントタウンを始めた。
「ウチのも行くよ!」
「ハイ!姐さんいつでも行けます」
隣に並んで走る船にオリガが声を上げ、威勢の良い女海賊たちが今か今かとその号令を待っていた。
「風力部隊!行くぞ!」
「アイサー!」
「さん、に、いち、風力部隊、ブロー開始!」
二隻の海賊船は、船尾に構えていた風魔法を得意とする者たちの風力部隊の魔法で、一斉に進み出した。
「往け!狙うは真ん中の船だけだ!後は派手に壊せ!」
その商船団については前の港で既に調査済み。船団の出港に合わせてコチラも距離を置いて洋上を目指し、そしてようやくの襲撃だ。三隻の商船はその中央に位置する船に荷物の大半を乗せており、それ以外の船は囮であり壁に過ぎない。無駄な壁とは言え、今の俺たちにとってはそれすらもお宝を積んだ宝船なのだが、船団を相手にすればどうしても取り零しが多いのが常だ。
砲撃長メーヴォとその部下による的確な砲撃によって右舷の壁の動きを封じ、更に左舷は白魚の船の砲撃に沈黙する。左舷の船は白魚の砲撃に火柱を上げて沈んでいった。なかなか派手にやる事だ。
航路を絶たれた商船は沈んだ船の残骸の中をどうにか航路変更しようともがいていたが、それも死弾と白魚の船に挟まれてあっけなくその動きを止めた。
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