第2話勇者、現代に立つ

気がつくと、そこは魔王の城ではなく、いつも見慣れたカビの生えた天井でもなかった。

無機質な色をした真っ白な天井を見上げる。

確か、魔王の城に乗り込み、魔王までたどり着いたところまで覚えている。

だが、それから先のことをおぼえていない。

果たして俺は魔王に勝てたのだろうか。そして、なぜ俺はこのような場所にいるのだろうか。

何もわからずまま、俺は窓の外へと視線を向ける。

窓の外には、かつて見慣れた城下町の人々で溢れる風景である。

がちゃりと扉が開く。

「やっと、目覚めたかね。勇者殿」

立派な白ひげを生やしたおっさんが入ってきた。いかにも医者という風貌でもないが、おそらくは医者に違いない。

「さて、一緒に来てもらうところがあるから来てもらおうかな」

俺は、ベッドから立ち上がり、白ひげのおっさんについていく。

大きな扉の前に立ち止まり、がちゃりと扉が開く瞬間、白ひげのおっさんが俺の方を見やる。

「まぁ、がんばれよ」

俺は、首を傾げた。


中に入ると、そこにはいくつもの壁画があった。

俺の見つめる先には、大きな椅子に座る男が一人いた。

「やっと、目覚めたかね勇者よ」

そこにいたのは、ジュラルミン王国の王だった。

王は冷たい視線を俺にぶつけながらこう言った。

「勇者よ、魔王を倒せなかった君をクビにする……以上だ」

……は? ちょっと待て、なんだそれは。

俺は、今自分の身に何が起きているのかわからないことに困惑している。

ええと、なんだっけ、

俺は魔王に勝てなくて、ジュラルミン王国まで戻ってきて、それで倒せなかったから勇者をクビになるのか。ふむふむなるほどねー。

「じゃなくて勇者クビになるんですか!?」

「その通りだ。何か言いたいことでもあるのかね?」

「どうしてクビになるんですか?」

「いや、ただ負けただけならまだクビにしないけど、魔王何もしてないのに気絶して、さらには漏らしたそうだし」

王は立派な髭を触りながら淡々と理由を述べた。

「至ってシンプルに魔王を倒せない勇者など必要ないということだ。だからクビだ。君はもう勇者ではない。以上だ」

だが、と王は言葉を続ける。

「君はこの世界には、もういられない存在になってしまった。だから、君にもう一度チャンスをやろう」

王は俺に不気味な色をした飲み物を渡してきた。

「それを飲みなさい、そしたら君はもう一度やり直すことができる」

何を言っているのかわからないが、とりあえず俺は飲み物を飲んでみた。

すべて飲み干すと、急に頭が痛くなってきた。体に力が入らなくなり、立つことすらできない。

その場で四つん這いになるも激しい眠気に襲われ、俺は倒れた。


次に目覚めた瞬間、そこは俺の知る場所ではなかった。

「……どこだ? ここは」

ーーそれが、俺の第二の人生の始まりだった。








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