第1ー1話 冒険の始まり

集落に向かう途中、自分の持っている荷物を確認しようとズボンのポケットを探ってみたが何もなかった。

「なんで手ぶらであんな丘に倒れてるんだよ俺...」

 自分を少し情けなく思ってしまった。

 そんなことを言って歩いているうちに集落の入り口が見えて来た。

 歩いて広場的なところに向かうと、人はまばらだが数人居たので色々と聞いて見ることにした。

「すみません、聞きたいことがあるのですがいいですか?」

 1人の男性に聞いてみた。

「なんだ、ボウズ...ってヒューイ家の所の坊ちゃんじゃないですか⁉︎」

「俺ってそんなにこの辺じゃ有名なんですか?」

 そんなことを聞いたことに店の主人はキョトンとしていた。

「あのぉ........」

「すまん、すまん。お前さんがあまりにも意味のわからないことを言って驚いただけだ」

「お前さんはここら辺を治めるヒューイ家は貴族でそこの次男さんだよ、そんなことも忘れちまったのか?」

 それを聞いた涼太は心底驚いた。

(俺って貴族家の次男なの!!)

 さすがに動揺がここでバレるのはまずいと思ったので、

「俺は記憶がないんだ...、それどころか自分が誰かさえわからない...」

「そりゃーおめぇさん大変だ、家までは連れて行ってやろう。」

 その男は、自分のことを家まで連れて行ってくれるといったのでついていくことにした。

 家に行く道中、何があったんだとかどうして記憶を失ったのかとか聞かれてが本当のことを言うわけにもいかず適当にはぐらかした。

(このおっちゃん結構ズバズバっと聞いてくるなぁ...)

 そんなことを思いながら歩いていると大っきな家が見えてきた。

 門の前まで行くと、

「俺の道案内はここまでだ。後はがんばんな。」

 そう言われ、そこでおっちゃんと別れた。

(さぁ、ここからまた色々厳しいけどやるしかない!)

 決意を胸に家の中へと入っていった。

家の中に入ると、玄関はだだっ広く天井にはシャンデリアがあり、誰もいなかった。

(家に入ったらメイドさんが迎えてくれるのかと思ってたのに...)

 そんなことを天城涼太は思っていた。

 適当に歩いてみることにしたもののあまりにも家の中が広すぎるため、行っても戻っても自分の部屋にたどり着くことはできなかった。

 ふと目に入ったドアが少し空いていたので、覗いてみることにした。

(誰かいるのだろうか....)

 すると、犬のような耳を頭に付けた人と犬の中間のような顔をした人を見つけた。

(この世界には、人以外の種族も存在するのか。まるでよくファンタジー系の本に出てくる世界みたいだな)

 そんなことを考えていると、覗いた部屋の中にいたメイドさんがこっちのドアに近づいてきたので話してみようと思った。

「あの、すみませんメイドさん。」

「私の事かニャン?」

「犬に似ているのにニャンってどうなの!!」

「そこは色々あってだけど、それよりもご主人さまどうしたのニャン?」

 そこからこのメイドさんにもある程度の事情を自分の部屋に案内してもらうことにした。

 もちろん記憶を失ったとか、異世界から来たとかは言っていない。


 自分の部屋に連れていかれ、中に入ってからはありとあらゆる自分に関することについて調べた。

 自分の事に関する資料を読むだけで日が暮れる時間になっていた。

(どんだけあるんだよ...、それだけ由緒正しいってことか)

 そこからわかったことは、この世界での俺はヒューイ・グリシラっていう名前で12歳、そしてここマーガの国を治める貴族家の次男である。しかし、あまり秀でたところはなく、いわゆる凡人ってやつだ。

(この国に関する歴史書は自分の部屋には無いからここまでか)

 ご飯の準備が出来たとメイドに呼ばれたので食堂まで付いていくことにした。


 食堂にはお父さんらしき人とお母さんらしき人と兄弟たち5人がいた。

 兄弟のうちの一人が、

「兄さん遅いよ。最近たるみ過ぎじゃない?」

 嫌味たらしく俺に向かって言ってきた。

(そういうのやっぱあるんだ、無視しとこ)

「遅いぞグリシラ、いつも言ってるだろう!全く...」

「すみません、お父さん」

 形だけ謝っておくことにした。

 ささっと食事を済まして、部屋に戻ろうとしたとき、

「お前さんは今後どうするか進路は決めたのか?」

「進路って...??」

「まだ決めとらんのか!!全く...、魔法大学に進学するかどうかだ」

(魔法がやっぱりあるのか)

 さっき本を読んでいた中でもあった。

 その本の中に魔法には5つの属性とユニークスキルがあると書いていた。

(俺自身どの魔法が使えるのか知らないがとりあえず行くしかこの世界を知るすべはない)

「魔法大学には進学します」

「そうか、やっと結論が出たのか。わかった。」

 それだけ聞くと父親は食堂から出て行ったので俺も部屋に戻ることにした。

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ボッチ高専生の異世界旅 tsukibana @tsukibame

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