オネエでゲイな私がハーレムで修羅場っている
二十口山椒
第1話
人がまばらに集まってきてざわざわしている教室の中で、それが気にならないくらい私はあることをしていた。
「・・・・・・あんたね、こんなにしてまで髪をいじらなかったら、可愛い顔が台無しじゃないの。一層海藻に近づいてるわよ」
黒髪でわかめの様なくせ毛をしている女の子の背後に立ち、ぼさぼさな髪をいじりながら声を掛ける。私の手にはこの子が持っていなくて私が持っているヘアブラシがある。
「えぇー、愛がしてくれるから良いじゃん。それに私は愛が髪をいじってくれている時間、好きだよ?」
「私がいなくなったらどうするのよ。髪は繊細なんだから」
「大丈夫。私は一生、愛に付いて行くから安心」
「付いて行くなら素敵な男性にしなさいって言っているでしょ。いい加減に私離れしなさい」
「私に死ねって言っているの!?」
「はいはい、動かないで」
私の言葉に、激しく反応しようと後ろを振り向いた女の子こと、
「・・・愛って、そんじゃそこらの女より女子力高いよね?」
「そう? 私は普通にしているだけだけど・・・っと、はい! できたわ!」
そうこう話している内に、今日の朝一番に見た通りの髪型に戻した。この子は運動とか、他の子より激しい動きをするからちょっと目を離した隙にいつも髪が乱れて、この子自体も戻そうとしないから戻してあげないと女が廃ってしまうわ。
「いつもいつもありがとー。愛は良いお嫁さんになるよ」
「やだ! そんな嬉しいことを言ってくれちゃって! お世辞でもありがとう」
美音のその言葉に、頬が緩んでしまう。ノリで言ってくれたと分かっていても言ってくれて嬉しいわ。
「むしろ私のお嫁さんになってくれれば、将来安泰だと思うなー」
「何言ってんのよ、あんたには素敵な人がきっと現れるわ。それに私はあんたに興味がないから安心して他の人を探して」
「優しく言われたと思いきやドストレートに断られた! この心傷をどうしてくれるんだ!」
「そんなに気合を込められても答えは変わりません」
「ちぇっ、私が知っている心優しい愛はどこに行ったの?」
「そうね、美音が大切にしていた私のアクセサリーを勝手に使っていた時からかしら?」
「うっ・・・・・・それは、なんと言いますか・・・・・・て言うか、先々週の話じゃん!」
「事件に時効があっても、被害者の心の時効はないのよ」
「ごめんってば。愛があのアクセサリーをそんなに大切にしているなんて思わなかったの。可愛かったからちょっと借りてしまったの」
この子は、私がそんなことで怒るとでも思ったのかしら。そんなことじゃないのよ。アクセサリーが使いたいなら使ってくれても構わないけど、
私は顔だけをこちらに向けて椅子に座っていた美音の正面に立ち、彼女の目線に合わせて小さい子に言い聞かせるような声音で話し掛ける。
「私は、ちょっと借りていくって言ってくれればそれで良かったのよ。それに美音が気に入っているならあげるわ。私が怒っているのは何も言わずに持って行ったことよ。私と美音の仲なのだから、いくらでも貸してあげるわ」
それを言うと、彼女は下を向いてプルプルしたが不意に私に抱き着いてきた。それを受けた私は美音の身体を抱擁するように抱きしめる。
「あーいーっ!! ごめん!!」
美音は私の名前を呼びながら、顔を私の胸にものすごくなすりつけてきた。
「分かればいいのよ。それに、今度一緒に美音に似合うアクセサリーを見に行きましょう?」
「うん!!」
なすりつけている顔を止め私の方に顔を向けて満面の笑みを浮かべてきた。うん、やっぱりこの子には嘘とかそんな負を抱えていない笑顔が一番。今のあなたは私も惚れそうだわ。
「どう? 今の私、母親らしい?」
「・・・うーん。態度とか声音はそうだったけど」
そう言いながら美音はさっきまでなすりつけていた胸を少しだけさわさわして難しい顔をした。
「ちょっと、ここが硬くてそういう気分が台無しになった気がする」
「余計なお世話よ。いくら筋肉を落とそうとしても落とせないんだから私の身体が心配になるわ」
「別に良いじゃん、筋肉が好きっていう男の子もいる、たぶん」
「そういうのは責任もって発言しなさいよ。それに・・・」
「もう茶番はよろしいでしょうか」
私と美音が喋っている間に、聞きなれている声が横から聞こえてきた。不意打ちだったから二人ともビックリしてもう一度抱き合ってしまった。
「いきなり声を掛けないでよ、
目つきが鋭く、ついでに言葉も尖っているロングヘアの黒髪の女の子こと、洗浄慈麗誠が声を掛けてきたのに対して私は悪くはないそちらを責めてしまった。
「いつもその茶番に付き合わされる私の身にもなってください。それに楽しいですか?」
「楽しくてやってるんじゃないのよ。これは立派な女子力アップ大作戦」
「・・・・・・ハァ、訳の分からない事を言っていないで、行きますよ」
「そんな真顔で言っても、ちっとも楽しくならないわよ! ほら、もっと笑顔になりなさい。ここの筋肉をこう使って・・・」
いつも学校では真顔でいる麗誠の頬を上げて笑顔を作りやすくする。でもこれで笑顔を作りやすくなるかは分からないわ。笑顔を作るイメージは作りやすいかもしれないけれどね。
しかし、さすが真顔で過ごしているだけの事はある。性格もまじめに、そしてこんなお遊びにはピクリとも笑わないし、しまいには手を振り払ってきた。
「時間もありませんので移動してください」
「はーい。それじゃあ行ってくるから、美音またあとでね」
「うん、行ってらっしゃーい」
美音の声を後ろで聞きながら私と麗誠は教室から出て、とある場所へと向かう。ここから目的の場所は少しだけ距離があるから早めに教室から出ていないと間に合わない。ここ、天核学園の生徒関連建物は三桁にいかないものの、それなりに校舎や寮があるから、ばらばらのメンツが集まる時は均等な距離にある場所が選ばれる。痛み分けかしらね。
「コホンッ」
「・・・ふっ」
わざとらしい咳払いで私に気が付かせようとした麗誠にかわいらしさを覚えてしまったけど、ご要望通りに身体をすれすれに近づかせて彼女の手をしかっりと握りしめる。
「私とあなただけしかいないんだから素直に言えばいいのに」
「そ、それは・・・恥ずかしくて言えないの」
「幼馴染にその態度はないでしょ?少し傷つくわよ」
「・・・愛だから恥ずかしいのよ」
さっきの真顔から一変して、普通の女の子の顔に戻っている。他の子がいるとこうはならないのにね。照れ隠しというやつかしら。
「それより、今回の招集内容はいざこざの鎮静化らしいわ」
「へぇ、それだけで私が呼ばれるなんて思えないけど・・・」
「種族間で勃発しそうないざこざよ」
この学園は人間だけでなく・・・いえ、むしろ人間の割合が低いと言える学園。天核学園の本質は種族との平和の懸け橋になるもの。
そしてたびたび起こるいざこざを解決する生徒の集まりの一部こそ、私が所属している天干である。
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