第2話 冒険は出会いと別れとともに

俺は路地裏から出てきたおじさんの馬車に乗り、エルグランドに向かっていた。おじさんの話によるとエルグランドは四方八方壁に囲まれていて、冒険者ギルドが大きいらしい。


「おじさん、エルグランドまではどれくらいなんだ?」


馬車の荷台から顔を乗り出し、質問する俺におじさんは「4時間だな、休憩も入れて」と言ってきた。


「4時間か」


俺はそれまで少し寝ようと荷台に取り付けてある椅子に横になるが揺れるため全然眠りにつく事が出来ず、俺はイライラしてきた。


「おじさんあと何時間だ?」


「うるせぇ!あと3時間57分23秒だよ!!」


おじさんの怒声に俺はこれ以上何も言わずに顔を引っ込めると再び横になった。


――カズヤ、たとえ私を忘れたとしても私は何があってもカズヤを忘れない、約束する。


エレミアのその言葉が頭から離れない、俺は今すぐにも引き返そうかと考えるが、

怒られてしまうだろうか、それとも今度こそは見捨てられてしまうのだろうか。


「おい兄ちゃん、ついたぞ」


いつの間にか寝てしまっていた俺はおじさんの声に目覚め荷台から顔を出すと、目の前には俺の伸長と比べようもないくらい高い壁があった。


「これが・・・?」


「ああ、エルグランドだ」


第二の都市エルグランド、リベール地方の2番目の都市である、ここには上級職の冒険者が多く、初心者に対しても優しく接してくれる冒険者が多いらしいと聞く。


「ありがおうなおじさん!」


俺は馬車から降り、送ってくれたおじさんに手を振ると、俺は大きく深呼吸して


「さて、桜井和也が繰り広げる英雄譚の始まりだ」


と、エルグランドと書かれた看板を見ながら言った。


* * * * * *


「すごいな、流石異世界だ」


馬車を降りてから20分が経とうとしているがエルグランド街内を歩いていて俺は周りの景色に驚嘆の声を上げながらもギルドを探す。


「本命のギルドはどこだろうか」


俺は首を左右に動かしてギルドの所在地を確認するがそれらしきものは今のところはなく、とりあえず俺は街内の景色を見ながら歩いていると、噴水と時計台が置かれている広い通りに出た。その広場には冒険者らしき格好をしている男・女が広場で何か話していたり、空を指さしている住人も本当に少数だが居た。


「すみません、どうしたんですか」


その光景が俺にとって怪しく、俺は近くにいた男性に事情を聞いてみると男性は「あれを見ろ」と、時計台の方を指さした。


「女の子が時計の針に捕まっていてさ、救護兵を要請しようか考えていたんだよ」


たしかに空を見上げてみるとフードが時計の針の先端にひっかがっている。そしてもっとよく目を凝らしてみるとなんと頭に三角耳がついている。


「あれは猫族か、獣人族だろうね」


「おお、君は眼がいいね、何者だい?」


「放浪者ですよ、てか助けないんですか?」


まあ流石にあの子は気絶しているだろうと予想すると、あそこに放置しっぱなしってのは少々人間として恥ずかしい。


「じゃあ助けに行かないなら俺が行きますか」


そう言うと俺は時計塔のドアを開け、中へと入っていくと運よく時計自体動いていなく、俺は時計の部品を足場にしながらもなんとか屋上までやってきた。


「さすがにここまで来ると高所恐怖症の俺は足が竦んでくるが、ここまで来たらやるしかないよな」


俺はここからあの子が居る外に繋がっているであろう鋼鉄のドアを開けるとそこにはエルグランド街内を見渡すことができるくらいの高さだった。


「さてと、行くか」


もちろん男の子なので俺は覚悟を決め、時計の太い針に片足をつけ、俺は脆くないか確かめる。


「よし、さあ行くぞ」


俺は少しだけ心に「恐怖」というウイルスが発生したがそれに抗いながらも両足をつけると壁に手をつけながら、猫耳の女の子の元へと向かう。


「そ~っと、そ~っと」


俺は壁を頼りにゆっくりと進むと、何故か突然、突風が吹いてひっかがっていた女の子のフードが破れ、女の子は真っ逆さまに下へと落ちていった。


「ちょっと待て、早まるな!!」


と、何故か今度は「救助」という俺の脳内意思に抗えず、俺は壁から手を放し、一か八かだが時計塔から飛び降りる。


「でもどうやって着地すればいいのかな・・・」


俺はそう考えながらも女の子の近くに行くと、俺は女の子を背負う感じに体制を整える。


「もししんだら可愛い妹がいる我が家へ返してくれ」


と、心の中で念じながら目を瞑る。


* * * * *


「うぅ・・・」


俺は目が覚めると白い天井が俺を最初に出迎えてくれるという最悪なパターン。


「ここは・・・?」


起き上がり、辺りを見渡すが脳が一時的にやられていたのか病院の病室だとすぐには分からず。


「目覚めたのね」


と、その声と同時に病室のドアが開き、看護師が入ってきた時にやっとここは病院だと気づいた。


「はい、まあ・・・」


俺は頬を掻きながら答えると看護師は俺の隣に立つといきなり服を捲り上げてきた。


「な・・・!?」


俺は看護師の行動に少し驚いたのと女性に俺のガリガリの体を見られるのは少し恥ずかしかった。


「ふむ、内臓、肝臓、膵臓が完全に死んでいるわね」


「それ怖いな!?」


透視能力かで高速診断という素晴らしい医療技術をお持ちと感心していた半面、普通の顔で大切な臓器が3つ死んでいる言えるのはこの看護師だけだろうと俺は確信した。


「でも、それならなんで俺は死んでいないんですか?」


内臓、肝臓、膵臓は生きる上で大切な臓器だが俺の体の中の3つの臓器が死んでいるとなると命的にも死亡しているはずだ。


「さあね、あなたの生命力が人間を超越してるからじゃない?」


確かにその理論は当たっていないとは言い難いが、俺は普通の人間なのにおかしすぎる。


「俺TUEEEEが適用されてるとか・・・それはないか、てかあの女の子は?」


そう言うと病人の前で煙草を吸おうとする看護師の手が止まった。

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