オイハギ(541文字)

「ウチらはオイハギになんかあわないよね」

 妹はそう言って、不安げに私を見た。

「だいじょうぶよ」

 私はそう答えたが、自信はなかった。

 それが伝わったのか、妹は俯いてしまう。

 街道は時間のせいか、私たち以外に誰の姿も見えない。

 怖くなって、引き返そうと思っても、私たちは前に進むしかない。

「身ぐるみ剥がされて、裸にされてしまうのよ」

 妹が震える声で言った。

「だいじょうぶよ」

「中身を抜かれたって話も聞いたわ」

「だいじょうぶよ」

「真っ白な裸だけにされて、転がされてしまうんだわ」

 その時、いきなり地面が動いた。

 私たちは宙に浮いた。

「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」

 私はそう繰り返し言い、妹と寄り添っていることしかできない。

 大きな衝撃の後、揺れが落ち着き、目を開ける。

 すぐ近くの高台に、白い裸がいくつも転がっていることに気がついた。

 見せしめらしい。

 オイハギの仕業だ。

 私たち姉妹はオイハギに捕まってしまったのだ。

 アァ……、短ィ人生ダッタナァ……。



「あんた、ネタだけ食べるんじゃなくて、シャリも食べなさいよ」

「いやよ。糖質制限ダイエット中なんだから」

「それなら、回転寿司に行きたいなんて言うんじゃないわよ」

「食べたかったんだもん」

「そういう食べ方をオイハギって言うんだからね」

「へぇ〜」

「寿司が泣いてるわ」

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