2.パラドックスな人々
同窓生(737文字)
日向でまどろんでいると同窓生に会った。
彼は隣に座ると話しはじめた。
「同窓会、来なかったね」
わたしは眠たくて無視した。
それで諦めてくれれば良かったんだけど。
「ねえ、どうして来なかったの?」
彼がしつこくするので、仕方なしに答える。
「行きたくなかったのよ。行く意味もないし」
「君はそういうタイプだよな」
「そんなことないわ。だいぶ前に一度だけ行ったのよ。でも、つまらなかったら、それっきり」
「君らしい」
「ようがないなら、あっちいってよ。眠たいんだから」
「いや、ようはあるんだよ。同窓会でたいへんなことがわかったんだ」
わたしは眉をひそめた。
「たいへんなことって?」
「Aが死んだんだ」
「Aさんが?」
「ああ」
「それで?」
「それだけじゃない! Bも死んだんだ」
「ふうん」
「Cも生きちゃいない」
「へえ」
「なんでそんなに無関心でいられるんだ。同窓会に参加者がぜんぜんいなかった。調べてみるとみんな死んでるときた。俺は君も死んだかと思って」
「おあいにくさま」
「いや、生きていてくれて嬉しいよ。しかしこれは呪いなんじゃないか。こんなに同窓生が死んでるなんておかしいじゃないか」
「ぜんぜんおかしいことなんかないわよ」
「どうして? なにか知ってるの?」
「わたしが殺したのよ」
「なんだって!」
「冗談よ。あなたすっかりぼけちゃったのね」
「ぼけちゃいないよ!」
わたしは目を閉じて同窓生のことを思い浮かべた。
たしかに大勢死んでしまった。
「同窓生がみんな死んだって驚かないわ」
「なんでそんなこと言うのさ!」
「だって、わたしたち、百歳なのよ?」
そう言って振り返ると同窓生はいなかった。
ああ、彼も一昨年、亡くなったんだった。
迎えに来てくれたのかしら。
暖かい陽の光。
子どもたちの笑い声。
もう少しだけ待っていてね――あなた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます