56話「カミラはボクっ娘」

―ヴァイスリッター―


 ダストにより【賢者の石】を奪われて数日後、ヴァイスリッターは元の活気を取り戻していた。

 中でも、最近新しく入ったセリカさんとウィザード3人娘は今も強い話題性を保っていた。


「へっへっへ、カイルさ~ん、新しく入ったウィザードの女の子可愛くて仕方ないですよね!」


 勿論、女好きなら僕に任せろ! と自信を持って言えるが見るも無残に振られ続けるエリクさんもその話題にノリノリなのは言うまでもない。

 

「可愛いか可愛いくないって言われたら可愛いんじゃないのかなぁ?」


 適当に返事をする俺。

 今いる場所はいつもの場所で、エリクさんの隣には読書をしているアリアさんがいる。

 よくもまぁ、普通にアプローチしている女の子の前でそう言う事を言えるって思えるが、エリクさんだから今更、だよなぁ。


「それでそれでカイルさん、カイルさんはどの女の子が良いですか? 僕はあの娘が良いんですよねー」


 自分があの娘を狙うから俺はそれ以外にしてくれって言いたげなエリクさんであるが。

 そもそも俺はあの3人の女の子は誰も興味が無いし、大体エリクさん? あなたセリカさんに夢中じゃなかったっけ?

 まーでも可愛いフリしてあんな女王様チックでドSな一面見せられたら熱が冷めて他の女の子に行きたくなる気持ちは分からないでもないが。

 いや、セリカさんの言動に対してエリクさんはニヤニヤしてた気がするが、さて。


「いや、俺はあの中の3人どころか別に誰も興味無いし」


 と言った瞬間、アリアさんから鋭い視線を向けられる。


「人がいないところで褒める事は本人に言うよりも効果があるのよ?」


 褒める? この場に居ない人で褒められる人かぁ、そうだなぁ。


「ルッセルさんって男の俺が見てもイケメンでカッコイイと思いますよ、剣技も物凄いと思いますしリーダーとしての手腕も凄いと思います」

「カイル君? 今ルッカさんが居たら貴方足を踏まれるか雷魔法撃たれてたよ?」


 アリアさんが冷たく言い放つ。

 え? 俺はアリアさんに言われた通りにしただけなんだけど? あ、そうか、つまりルッカさんは。


「ええ? ルッカさんってルッセルさんの事悪く思ってるんですか?」

「つくづく、ルッカさんが気の毒に思う」


 アリアは、どうしてカイルが女性に人気があるのか納得し兼ねる表情を見せているが、当のカイルはそれがどういう意味なのか気付いている様子は無さそうだ。


「そうですか? 俺から見たら割と恵まれてる様に見えますけど」

「わざとじゃないなら才能あると思う」


 そう言い放つと、アリアさんは読書を再開した。


「フッフッフ、カイルさん? アリアさんはきっと、カイルさんが推したい女の子をこっそり言えばきっと良い事があるって言いたかったんですよ」


 どやーっと言いたげに解説するエリクさんだ、普段の言動を考慮すると何かムカつきはするが。

 

「と言われても俺は本当に特別な興味はありませんし」

「私も同じだったっけ」


 俺の言動に対してアリアさんがボソッと呟いた。

 

「僕はカイルさんが羨ましいですよ、今ここでルミリナさんの名前を言えばきっとルミリナさんと良い事が! ですし、ルッカさんの事を言えばきっと雷魔法、いえ雷魔法でお仕置きされるのって嬉しい事でしたね」


 にへにへしながら言うエリクさんである。

 雷魔法をぶつけられて喜ぶって、やっぱりエリクさんはそう言うの好きなんだろうな。


「ルッカ様~お会いしとうございました~☆」


 と、少し離れた場所からルッカさんを賛美する声が聞こえて来た。

 これは別に珍しい事じゃないんだけど、いや、待てよ? 今の声妙に高い声だった様な?


「私、女には興味無いんだけど」

「うふふふふ、ボクはルッカ様に興味深々なのだぁ~」


 と、ウィザード3人娘の1人で確かカミラさんとか言った背の低いウィザードがルッカさんに飛び付き抱き付いた。


「あんたねぇ」


 ルッカさんは大きなため息を付くが、面倒だと判断したのかカミラさんを振りほどこうとせず好きにさせていた。


「あわわわ、ル、ルッカさんに抱き着けるなんてあの子羨ましいです! なんなら二人共抱き付いてしまいたいっ!」


 エリクさんがその様子を羨ましそうに眺めているが、実際そんな事したら雷魔法だけで済むかどうかは怪しい所だ。


「なら、一度やってみたら? 魔法防御力上げれば雷魔法なんて痛く無いと思うよ」

「えへへ、そうですよね? 減るもんじゃないですしね、カイルさんが言ったんですからね?」


 何があっても俺のせいに出来るという免罪符を手に入れたからか分からないが、にへにへ笑顔と言う少々気持ちの悪い表情をしたままエリクさんは二人が居る所へ向かった。

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