50話「ゲート」
「次は南部ね」
デザートオーガを打ち倒した俺達はヴェストタウン南部に巣食う魔物を討伐へ向かった。
セフィアさんの持っている転移アイテムのお陰で移動自体は楽だ。
このエリアではサボテンに擬態した魔物、生前は獰猛な動物だったであろうスケルトン化している魔物が見受けられる。
幸いな事にあまり強そうに見えない。
油断大敵と言う言葉が存在するが……。
確かサボテンは水を与え過ぎると腐るはず。
折角なので俺は右手に『フリーズ・アロー』左手に『ファイア・アロー』を発生させそれを合体させた。
「ウォーター・アロー!」
炎によって溶かされた氷が水となり、その水が鋭い矢となりサボテンの魔物を襲う。
が、しかし残念ながら俺の合体魔法は狙ったはずの魔物を大きく外し別の魔物へ当たってしまった。
数が多いから何とかなったけど……幾らなんでもこのコントロールの悪さは酷いと思う。
「フフ、合体魔法で水属性を作り出したのね、やるじゃない?」
「いや、コントロールが最低で全然ダメです」
「あら? 自分に厳しいのね? 今後の課題が見つかって良かったじゃない?」
「そうですね、戻ったら練習します」
しかし、魔法が狙った所に当たらないっていつぶりだろう?
なんて考えてると、後ろに居たアリアさんが『ファイア・ボール』をスケルトン化した魔物へと放った。
こちらもまた、お世辞にも狙い通り撃ててるとは言えないが俺よりもマシな感じで、急所こそ外したものの身体の一部分を炎上させる事に成功、それなりのダメージを与えたみたいだ。
「まだ魔力はあるんでしょ? 折角だしここで練習したら?」
確かにセフィアさんの言う通りだ。
敵の数は多いな……。
どうしようか。
そうだ『ファイア・アロー』と『ウィンド・アロー』を重ねた『ブラスト・アロー』を試してみよう。
「ブラスト・アロー!」
敵の数は多い。
俺は炎と風をあわせる事で広範囲に爆風が広がるのではないかと考え試してみた。
「難しそうね」
やっぱり『ブラスト・アロー』も上手くコントロールが出来ず、俺が狙った魔物から大きく右側に逸れ、偶々そこにいた魔物に着弾した。
「でも、威力は悪くなさそうね」
セフィアさんが言う通り『ブラスト・アロー』により生じた爆風は着弾点付近にいた複数の魔物を薙ぎ払っていた。
相手がサボテンって植物とスケルトンであり炎に弱い事を考慮しても満足の出来る威力だ。
今回みたいに多数の魔物が居る場合は何とか使い道がありそうだ。
とはいえ、狙った敵に当てれる様にするのが先決だけど。
「……」
俺の魔法の威力に対し、感化されたのか、アリアさんが『ファイア・ボール』を後方から連発した。
「あら? アリアちゃんもやる気になったかしら? でも、魔力の残量には注意してね、私魔力を回復する道具は持ち合わせてないから」
「いえ」
セフィアさんに指摘されたアリアさんは、ハッと我に帰り自分がプリーストである事を思い出し『ファイア・ボール』の連発を止めた。
「クス、良いのよ、たまにはハメを外したって、さっ、後はお姉さんに任せなさい!」
セフィアさんが颯爽と駆け出し、クロスボウを上手く扱い1体ずつ急所を的確に狙い倒していった。
「相変わらず凄いなぁ」
俺が感嘆を上げている間にも1体、また1体と華麗な動きを見せながら撃ち抜く。
「この位の魔物は朝飯前よ」
この辺りに居た魔物の群れを全滅させたところで、セフィアさんがくるりと回ってウィンク一つ見せた。
「あれは?」
アリアさんが遠くを指差し呟いた。
それに釣られてその方向へ視線を向けてみると、漆黒のオーラに包まれたゲートが目に移った。
「あんなゲートあったかしら? あら? 中から魔物が産み出されてるみたいね、これは一旦マスターに報告する必要がありそうね」
セフィアさんが言う通り、ゲートの奥からこの地に向けてさっき倒した魔物が産み出されているのを確認出来る。
今回の騒動の現況と考えられるが……。
何故出現したのか、何を目的として出現したのか俺が分かる訳もない、セフィアさんに従い一度ヴァイス・リッターに戻るべきだろう。
ヴァイス・リッターへ戻ると、すぐにセフィアさんがルッセルさんへ報告を行った。
「ご苦労様でした。 貴重な情報を有難う御座いました」
「大した事じゃないわ」
「いいえ、私もそのゲートの存在、貴女方が戦った魔物を知りませんでした、安置されていた賢者の石が無くなった事による弊害と推測が出来ます」
ルッセルさんの推測を聞くと、賢者の石はこのエリアの平穏を守る為に必要な物である事が伺える。
そうなると、何がなんでもダストから賢者の石を取り返さなきゃいけないと思う。
「恐らく私の裁量を超える案件になります、一度上層部へ報告して来ます」
でも、セリカさん達を平気で捨てる人間が賢者の石を手にした。
物凄い魔力を付与してくれるそんなモノを手にして大人しく引き下がるとは思えない。
戦う事になるのだろうか?
人間同士で戦わなきゃいけないのだろうか?
いや、俺の力じゃ少なくともギルドマスターを勤めているウィザードの前では成す術無く殺されてしまうだろう。
-セザール学園学長室-
ルッセルがカオス学長の元へやって来た。
「ダストの手により賢者の石が奪われた結果、ヴェストタウン南方に魔物を産み出すゲートが発生した模様です」
「そうか」
報告を受けたカオス学長は、まるで予測通りと言わんばかりに淡々と受け止めた。
「ルッセル君、君達に申し訳無いが賢者の石を奪還して欲しい」
「分かりました、SSSランクハンターと言えど、賢者の石の魅力に勝てる人間は居ないでしょうから」
ダストもルッセルと同じギルドマスターである、そんな彼が賢者の石の力で強化された。
正直なところ勝てるかどうか疑問を抱くところであるが、ルッセルの性格上その気配すら見せる事がない。
いや、一見すれば無理難題に見えるがカオス学長ならば必ず手を打つと信頼してるからなのかもしれない。
「ダストの生死は問わぬ、万が一の時は私も手を貸そう」
「はい、それでは失礼します」
ルッセルはカオス学長に一礼をすると学長室を後にし、ヴァイス・リッターへ向かった。
-ヴァイス・リッター-
翌日、俺達はルッセルさんからの指示を待つ間、アリアさんの勉強エリアに集まっていた。
「あのゲートどうするのかしら?」
「封鎖するかどうにかするんじゃないのかなぁ」
あのゲートは魔物を産み出す以上、ゲートそのものをどうにかするしかないんだけど。
かと言って、物理的な力でも基本的な魔術でもどうにか出来る気がしないんだよなぁ。
「そうよねぇ、けど、私の力じゃどうしようも出来ないのよね」
「そうなんですよねぇ」
例のゲートについて解決策が浮かばない俺とセフィアさんが同時に溜息をついた。
「おや? お二人さん深刻な顔してどうしたんですか?」
と、エリクさんが心配そうに尋ねた。
「そのねぇ、昨日の戦いで魔物を産み出すゲートが見付かって……」
「そうなんですか!? 確かにいつもより魔物の数が多かった気がしますし、もしかしたら僕が担当したエリアにもあったかも知れませんね」
「そうねぇ、はぁ、あんなのが何ヶ所もあるって考えると憂鬱な物ねぇ」
俺もその意見に賛成、たった1つを対処出来なくて悩んでいる中他にもあるかもしれないなんて考えたら憂鬱以外の言葉なんか出て来る訳がない。
これは是非とも探しても存在しないものとして考えたいところだけども。
「ルッセルさんがギルドのみんなに連絡する事があるんだってー」
そこでルッカさんの声。
そのお陰で憂鬱な気分が晴れたんだけど、でもルッセルさんからの連絡でまた憂鬱になるんだろうなぁ。
ここで行かなくてもどーせ他の誰かから聞かされるんだし結局行くしか無さそうだよなぁ。
俺達は、ルッセルさんからの連絡事項を受ける為ギルドハウスの広間へと移動した。
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