5章.決戦

46話「ウィザード参入」

 ギルドハウスに戻り、落ち着いた時間を取り戻したところで


「中々大変そうねぇ」

「そうですね」


 セフィアさんの言う通り賢者の石が奪われてしまった事によりこれからどうなるのか俺も大変に思う。

 

「ほら、あの娘達、早速ヴァイスリッターを巣食う狼達に狙われているわ」

「そうっすか」


 って大変なのは賢者の石じゃないんかい!

 確かにさぁ、今さっきここに入ったばかりのウィザード達をルッセルさんがギルドメンバーに紹介した瞬間同じギルド内の男冒険者達が群がってたし大変だと思うけど!

 

「セリカちゃん以外は大人しそうに見えるからお姉さんちょっと心配だわ」

「さいですか」


 セフィアさん、絶対後ろから行く末を面白がるだろ、と言いたくなったがここは我慢した。

 

「所詮男なんてそんなもの、より美しいモノ新しいモノを見つけた瞬間手のひらを反すのだから」


 近くに居たアリアさんが素っ気無く呟いた。

 確かに昨日まで馬鹿みたいにアリアさんに群がっていた男達が誰一人としてアリアさんの所にやって来ていない。

 

「あらあら~? アリアちゃん、まだ若いのにそんな事言っちゃー」

「若くたって突きつけられた現実ですから」


 アリアさんは、セフィアさんが悪戯半分で投げかけた言葉をそっと振り払う。


「いや、でも、アリアさんの気持ちは分かるかも」


 俺も小声で呟いた。

 しっかし、予想通りセリカさんの罵声がすげー聞こえる。

 って、それでも尚目をへの字にして擦り寄ろうとする男が居るのか。

 絶対に無いとは思ったけど、エリクさんにライバルが出現するのか、これ。

 

「あはは、もしかして、他の男の子達が取られちゃうのが気になっちゃう?」

「いえ、私は男性に興味がありません」

「フフっ、冗談よ、冗談」


 アリアさんをからかっているセフィアさんがクスッと笑いながらウィンクを見せた。


「あ、ルッカさんが彼女達に近付いて……セリカさんと何か言い合って……残り二人のウィザードとは何か上手く言ってるみたいで……、あ、こっちの方に来たぞ?」

「あいつ等最悪!」


 ルッカさん? 何があったんだ? いつに無く機嫌が悪そうなんだけど。


「えーっと、ルッカさん、一体どーしたのかな?」

「セリカって人はまだいい! ウィザードとしての手腕はあるから、あれ位の態度は良いのよ!」


 その声を聞く限りとてもじゃないけど良いとは思えないんですけど。


「何よあの男達! ウィザードなら誰でも良いの!?」


 ルッカさん? 貴方男に興味薄い様に見えるんですけど?

 

「さ、さぁ? 誰でも良いんじゃないの?」

「新しい女の子が入った瞬間私なんかどうでもいい態度見せた癖にあの3人に相手にされなかったら私に急に擦り寄って!」

「いや、その、ルッカさん? それらの男達まともに相手してた記憶は無いんですけど」

「カイルはそういう異性にだらしない人間を見ててムカつかないの?」

「いや、全然? そもそも女性が一々俺に興味持ってるって思ってないし」

「……カイルに聞いた私が馬鹿だった」

 

 ルッカさんは、大きな溜息を付くとその場から立ち去った。


「あの娘、チヤホヤされたい願望強いみたいねぇ」

「そういう事ですか」


 いましがた、ルッカさんの取った言動に対して少しばかり納得が出来た。


「男なんて適当に転がせば良いのにね、ルッカちゃんもアリアちゃんも真面目だからねぇ」

「いえ、私は男と関わるリスクも避けてるだけです」

「ま、懸命な判断ね。 あのセリカって娘は転がすよりも勝手に支配される男が増えて面白い事になりそうね」


 ルッカさんが男を転がす、ねぇ? あーないない、そんな器用な事出来る訳ねぇよ。


「カイル君、君はあの娘達に興味無い?」


 唐突にアリアさんが尋ねて来た。

 

「いや、俺は全く興味無いよ?」

「そうなのよねぇ、ボウヤって、あんなに可愛い女の子達が居ても全く興味が無いのよ、実は私達がしらない男とデキてるって疑いたくなる位にね」

「ははは、それもありませんよ」


 女に興味が無いからって男に興味があるって発想が良く分からないけども。


「そう、珍しいのね」

「今さっき出会ったばっかの人に一々興味持っても疲れるよ」


 一々自己紹介したり、一々相手のあれこれ聞いたり、一々相手に自分の事説明してって……。

 それだけならいいんだけど、女の子にそうやって近付いてばっさりと斬り捨てられ続けられた学友を知ってるからそう言うのは無駄な労力でしかないとしか思わないのだ。


「ふーん? ボウヤって可愛い女の子とあーしたいとかそーしたいとか思った事無いのかしら?」

「何っすか? それ?」

「あらあら? ボウヤにはまだ早かったかしら?」

「そっすか」

 

 セフィアさんが、一体全体何の事を言っているのか理解出来ないが、どーせロクでも無い事だと思うからこれ以上追及しないでおく。


「勿体無いわねぇ? ボウヤに興味を持ってる女の子って多いのよ?」

「そういう話はよく聞きますけど」


 確かに俺はセザール学園を全教科トップで卒業したから多少なりとも興味もたれるみたいなのは知ってる。

 

「あら? 自覚があるのね?」

「多分……?」

「フフフ、このギルドだけでもルミリナちゃんにルッカちゃんにアリアちゃんも居るからね~迷っちゃうのも仕方無いわね」

 

 セフィアさんが悪魔っぽい口調を見せている、本人は物凄く楽しそうに見えるが、俺からしたら段々めんどくさくなってくる。


「いえ、私は興味ありません」


 と思ってるとアリアさんがバッサリと斬り捨ててくれた。

 まぁ、俺も別にアリアさんに興味がある訳じゃないから別に良いんだけど。


「そう言うと思ったわ、フフッこれでエリク君が回復したらどんな反応するか楽しみね? ウィザード2人にも手を出す姿想像したら面白くならない?」


 確かに、セリカさんを引き摺ってまさかの再会を果たしたにもかかわらず他の女性にも手を出してる姿を見るのは面白いと言われれば面白いが……。

 

「私は別に、当たり前の男の行動を見ても興味ありません」


 冷たく吐き捨てるアリアさんであるが、確かに他の男達の動きを見る限りその言葉は正しいと思う。

 

「ホント、貴女達ってこれでもかって位異性に興味無いわねぇ」

「男は信用出来ません」

「俺は勉強ばっかしてましたから」

「そうねぇ……そうやってスパっと言われると冒険者になってからも沢山勉強しなきゃいけない事はあるわね」


 そう、セフィアさんが言う通り少なくともエリクさんが覚えてる魔法だって会得したいと思うし、魔法剣だって合体魔法だって覚えなきゃいけないし、単純に魔力や筋力の増強もしたい。

 セフィアさんに言われて気付いたけど、勉強でやらなきゃいけない事が多過ぎて女性を意識してる暇すらなかったんだろうな。

 じゃあ、誰を意識する? と言われて無理矢理意識したって、相手あっての感情だしなぁ。

 まぁ、今まで通り特に気にしなくて良いんじゃないかと思う。

 この後も暫く下らない会話を展開し、程良い時間となったところで帰宅した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る