第3話 今、そこにある危機
教室に来た自衛隊員に体育館に移動するよう促され皆、廊下で出席番号順に一列に並び大移動を始めた。
生徒達は抜き打ちテストが中止になり安心する。
先生達は生徒の前では平静を装い、やたらと校舎に備え付けられた放射能測定器は感知していないと連呼するが放射能と言う見えない恐怖に居ても立っても居られない様子だ。
自分達に安全と言い聞かせているようにも見える。
順番が近い万丈目・縁司と町野、室町は三人並んだ。
町野が真面目を装い嬉しそうに話す。
「先生達の話だと近くの公園で放射能を出す物体が出たとか出てないとか」
室町が突っ込む。
「どっちだよ」
「今、科学者がガイガンカンタッターで調べてるらしい」
「ガイガーカウンターだな」
「光ヶ丘は元々米軍の基地が有って、もしかしたら極秘の実験で核兵器を持ち込んでたのかも?」
「そこまで来ると、ただの都市伝説だな」
並んだ生徒達の移動が始まる。校舎の窓から縁司は自衛隊の一団を見て嬉しそうに言う。
「何か怪獣映画みたい」
室町が縁司を茶化す。
「怪獣オタクの万丈目が興奮してるぞ! 何だっけ? いつも言ってる怪獣……」
「ペンタゴンだよ! 冠怪獣ペンタゴン」
縁司は嬉しそうに言う。
「何で冠怪獣なんだよ?」
「皇帝ペンギンの怪獣だから冠怪獣ペンタゴン。僕のおススメは怪獣大妄想! クライマックスの人類対妄想怪獣軍団の決戦は妄想バトルのオンパレード! 怪獣映画と言えばパラボラ型の超兵器だね。防衛隊の曲に乗って光線をバンバン撃ちまくるのが熱い! 醍醐味は……」
熱弁する縁司を見て近くにいる女子生徒達が笑っている。
横目でそれが解り縁司は急に恥ずかしくなり言葉を噤む。
体育館に誘導された全校生徒は、それぞれビニールで仕切られた仮設部屋で並び検査を待つ。町野が縁司と室町の二人に持ちかける。
「なぁ、帰り遊びに行こうぜ」
その話を先生に聞かれ注意される。
「お~い、駄目だぞ~真っ直ぐ家に帰りなさい。放射能が漂ってるかもしれないんだから」
「放射能が漂って無い所に行けば大丈夫でしょ?」
「そんなわけあるか~。駄目だ、ちゃんと帰りなさい。放射能を浴びたたら髪の毛全部抜けるぞ~いいのか~?」
町野は先生の薄い頭を見て言う。
「先生も放射能を浴びたんですか?」
「お前、いい加減にしろ~そんな事、知らなくていいんだ」
町野は不満そうに言う。
「そうやって大人は直ぐ駄目だとか知らなくいいとか言って結界を張るよな!」
縁司が自衛隊員を興味本位で眺めていると防護服を着た自衛隊の集団に明らかに不自然な人物が居た。
ガスマスクで顔が見えないにも関わらず、どう考えても縁司が知っている人物としか思えないその人はフードの上にエイやヒラメのように平たく大きなポニーテールを出して……いや、装着している。
他の生徒達も気付いたようでポニーテールを見て友達と小さく笑っている。
あれ、変装のつもりかな?
縁司の順番になると他の生徒とは別のビニール部屋に案内された。
縁司は不思議に思いながらも椅子に座る。
中には縁司だけ、しばらくすると防護服の人物が現れ入口で立ち尽くしこっちを見ている。
ガスマスクで聞き取り辛いが何かを言っている。
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