第1話 今、そこにある危機

 区立、光ヶ丘中学校。

 午後の授業は小テスト、生徒達は黙々と小さな紙にペンを走らせていた。

 が、万丈目・縁司えんじ少年だけは食後の眠気に襲われ自分との戦いを繰り広げていた。

 駄目……眠い……。赤ベコのように降る首は遂に落ちる――――…………。

 そして――――閉じたまぶたを砂嵐が駆け抜ける。砂嵐に二本の亀裂が入り大きく見開いた。


 そこにはマグマのように赤く不気味に光る眼が有った。


 縁司は目覚め奇声を上げて席を立つ、教室の中は突然立ち上がる縁司に注目が集まる。


「万丈目。怪獣に襲われる夢でも見たか~」


 先生が注意すると生徒達は彼を笑い縁司は恥ずかしさで顔を赤くして席に座った。


 まただ……また同じ目だ! 何で? この前、退治したのに?


 外から聞こえる物音を聞き縁司は窓に目をやる。


 ヘリコプターから聞こえるプロペラの回転音。

 授業に集中出来ない少年は学校の上空を通過しようとするヘリをしばらく眺めていた。

 しかし、ヘリは一向に通過する素振りを見せないどころかプロペラの駆動音と共に徐々に大きくなって行く。

 流石に室内の生徒も気付いて窓を見る。  


 降下したヘリは学校の上空でホバリング、校庭に波紋のような砂埃を舞い上がらせた。

 生徒達は騒ぎ始めると皆、席を立ちこぞって窓に押し寄せ教師までも野次馬になる。

 野太いヘリの前と後ろにプロペラが一つずつ付いており前後疎らに回転し胴体は緑と茶色の迷彩柄で機体の腹に『陸上自衛隊』と書かれている。


 物々しいのは空だけではない正門を通って迷彩柄のジープやワゴン車が次々と入って来た。

 校庭に停車した車から宇宙服のような格好をし、ガスマスクを装着した集団が現れる。


 生徒達の目は釘づけになり、様々な憶測が飛び交う。


「何々? 映画の撮影?」「不発弾が有るとか?」「きっと日本で戦争が始まるんだよ……」


 自衛隊と思しき集団の一人が拡声器を持ち校舎に向けて第一声を放つ。


「皆さん! 落ち着いて話しを聞き隊員の誘導に従って下さい――――この地域は放射能の影響を受けた可能性が有ります!」

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