第3話 白い幽霊
練馬区光ヶ丘は元々、軍隊の航空基地が有ったからか坂は少ないうえ平坦な土地が多く建物の屋上から眺めるとメリハリの無い団地が視界いっぱいに広がる。
壁のように建ち並ぶマンションは人食い巨人が来ても防壁になりそうだ。
マンションの下には公園が幾つも広がり遊ぶ時の集合場所に使っている大きなショッピングモールは街の中心にあり地元の人間は買い物に来ると知り合いと良く出合わせる。
建物の間を区切るように伸びる大通りにはマンションや公園を行き来する為の大きな橋が架けられていた。
そんな団地と公園に挟まれた区立、光ヶ丘中学校。
横長に伸びる四階建て校舎で生徒数は三百人以上、男子は学ラン、女子はセーラー服と平均的な中学校だ。
午前、生徒達は並ぶ机にかじり付き黙々と授業を受ける。
突然、万丈目・
全身の細胞一つ一つが震えている感じだ。
全身が熱くなり見える景色に亀裂が入る。
縁司は最初、眼鏡のレンズに付いたキズかと思ったが次第に亀裂が増えて行き砂嵐となり視界を遮った。
次の瞬間、砂嵐をかき分け現れたのはマグマのように、光る二つの巨大な目だった。
「うわぁ!?」
眼鏡の少年は驚いた拍子に椅子ごと後転した。
「どうした? 万丈目! だいじょ……」
先生や同級生も心配の声をくれたが、直ぐ 笑い声に変わった。眼鏡が飛んで周りがよく見えず状況が理解出来なかった。
ぼんやりと見える視界で窓に映る自分の姿を確認すると――――。
髪が四方八方に逆立ってむさ苦しいライオンのようになっていた。
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午後に入り給食の時間が終わると生徒達は昼休みをグループに別れ女子はお喋り、男子はプロレスごっごやカードゲーム等で過ごしていた。
そんな中、縁司は竹馬の友、室町、町野と机を囲み神妙な顔で話しをしていた。
「万丈目……やっぱりアレはマズいぜ」
室町の投げ掛けに町野が賛同する。
「手を離したのはヤバいよな。コックリさんとか貞子さんとか最後呪われて死ぬのが決まりだし」
「隣のクラスにいた女子が儀式の最中、手を離したんだって……で今、昏睡状態で病院に入院してるらしい――――多分、呪いにかかったんだと思う」
「お前の為にやったのに、とんだとばっちりよな」
よく言うよ。藤沢さんのこと好きだと解ったら面白半分で彼女が僕の事、好きか占おうって誘ったくせに……。
縁司は不意に女子のグループで楽しくお喋りする、一人の女子生徒を見た。
藤沢さくら。
気が利く優しさを持つ彼女はあまりクラスで目立たないが見た目も可愛い為、男子から人気だ。縁司との出会いは小学生の合同運動会。小学四年生の縁司は用をたしに校舎のトイレに駆け込もうとすると体育館の裏である少女を見つける。
少女とは別に男子の声が聞こえた。
「お前、俺達にぶつかっといて謝らないのかよ!」
「他校の生徒が生意気何だよ!」
少女は震える声で答える。
「さ、さっき謝ったじゃない……」
彼女は酷く困っている。
何故なら縁司と同じ学年のいじめっ子、
いつもこの調子だ。
気に入らないと難癖付けていじめて来る。
縁司も何度か絡まれたことがある。
しかし、か弱い女の子にまで絡むとは許せない。
縁司の正義が少女を助けろと命令する。
縁司は少女の前に立ちいじめっ子に立ち向かう。
「やめろ!」
身体の小さい眼鏡男子の縁司を見て鮫島と凧八津が睨む。
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