秋、あるいは
きゅうご
第1話
なんだかわからない、が、とにかく痛い。
それから喉が渇く。
ひりひりするというか、冷たいような、刺されたような、あついような。
痛くて涙が出ているはずだが、眼球はひりついてまぶたが閉じない。
歩こうと思うのだが、足の運びがうまくいかない。
腕の肉が見える。皮がない。筋肉のようなものが風に吹かれ燃えた服に触れると痛いので、体から離す。ふれる度に痛い。服は焼けたのに腹や足や乳房にところどころ張り付いていた。たくさん燃えているので焦げ臭いはずなのに何故だか少し前に行った焼肉屋の網を思い出す匂い。
足の裏が痛くて歩きたくないのだが仕方ない。
一歩を悲鳴をあげながら歩く。そのはずだがのどがかわいて音が出ていない。
腕が重い。皮が、どうしてだかずるりと手の指先まで剥けていて、指先の爪のところに引っかかって重い。
あついような、ひりひりと、冷たいような刺すような、ただ痛くて。
ずるりと肩から腕が抜ける感触があった。ありがたい少し軽い。見たら肉の脂が溶けている。そうかさっきからフライパンの匂いがしていたのはこれかあ。
歩く足の裏が、だんだん薄く骨まであらわになっているらしく、足の肉を転々と後ろに落としながら歩く。
喉が渇いていた。
何か柔らかいものにつまづき転ぶと目の前が白く明滅した。
歯が折れたような、初めから落としていたような。
頬が吸い付いたじめんは熱く熱く、じぃーっと音がしている。
それが自分の頬が焼ける音だと気づいたが、しばらく聞いていた。耳が聞こえてきたのだと気付いたから。
すると今度は折り重なって時々蠢く黒いものから聞こえる歌のようなものがうめき声と苦鳴だと気付いた。
低く高く、歌だと思ったそれは周りから大きく小さく届いてくる。
わたしは
地獄に
落ちたらしい
水を、くれないだろうか。
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