東京クランク
謡義太郎
プロローグ
静岡沖を発端とし、太平洋岸に沿うように連鎖した一連の地震は壊滅的ともいえる被害をもたらした。
北海道から九州に至るまで、太平洋に面した地域は満遍なく揺らされ、呑み込まれ、燃やされ、崩れ去った。
原子力発電所も被災し、多くの爪痕を残した。
ズタズタになった幹線道路。渡れない橋。破裂した水道管。破壊されたインフラが人々の生活を直撃した。
地中埋設が進んでいた各供給網は、其処かしこで途切れ、復旧は即ち再構築ということだった。
震災の数年前に開発・発表され、まったく普及せずに眠っていた技術が注目を浴びる。
小型振子式発電機である。
「二酸化炭素を発生させず、必要な場所で、必要な分だけ発電する」
そんなコンセプトで開発されたものの、大電力と張り巡らされたインフラによる安定供給を前に、実用段階にあったにも拘らず、日の目を見ることはなかった。
湾岸地域がまったく機能しない状態で、発電に必要な化石燃料を、広範囲に散らばった被災各地へ供給するのは難しく、現実的ではない。
だが、人々は生活のほとんどを電力に依存していた。もはや電力なくしては生きていけない状態だったのだ。
政府は被害の少なかった日本海側の地域で、振子式発電機を緊急生産し、被災地域へ配布することを決定する。
それから数年後、一部を除いて大型発電設備は姿を消した。
代わりに振子式発電機が爆発的に普及し、生活の中に溶け込んでいった。
人はあまりモノを燃やさなくなった。
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