第2話 見慣れた日々
一階のリビングに着くと早速俺は妹の作ってくれた朝御飯を食べた。ちなみに今朝はスクランブルエッグと納豆一箱とご飯それに味噌汁というメニューになっている。俺は早速納豆を混ぜて、ご飯にかけて、味噌汁をすする。
「お兄ちゃんおーそーい、春、もう食べ終わっちゃったよー?」
テーブルの向かいに座っている妹はすでに朝食を食べ終えていて、食器を重ねている。
「そうか、もっとゆっくり噛んで食べないとダメだぞー、む...じゃくて、体が成長しないからなー?」
「おにいちゃん今、胸って言いかけたでしょ!」
「いやいや、まだ言ってないからセーフ!俺は無実です。」
「セーフってなに!?アウトだからね!ひどーいおにいちゃん、春これでも平均なんだからっ!ほら!」
「あーもうわかったから胸を寄せるな、普通に朝食取らせてくれーー。」
俺がそういうとしばらく妹はムッとした顔で俺をジッと見ていた。俺はその姿をチラチラと見ながら食事を進めていた。
「んねー 毎朝思うんだけどさー着替えるの遅くない?毎朝1人でエッチなことしてたりすんの?」
ぶほっ、こいつは何を言ってるんだ。思わず飲んでいる味噌汁吹き出してしまったじゃないか。
「な、なわけないだろ、お、男の支度にも色々あるんだよ。」
「へぇ〜お兄ちゃんの支度には1人エッチも含まれてるんだ。」
妹はニヤニヤしながら頬杖をし、テーブルの下から軽く蹴ってくる。
朝からその冗談はそこそこめんどくさくはあるが、
「だからしてないって。」
といやいやながらも可愛い妹にツッコミを入れる俺、
「怪しいぃ〜まぁそれはそうと春、今日はピアノの演奏を町内会で頼まれちゃっているから帰りちょっと遅くなるけど晩御飯何が良い?」
「帰り遅くなるなら俺が晩御飯作っとくよ。でも演奏会の会場の近くにいつものスーパーの近くどうせ通るんだから1週間分の食材宜しくな、後、カルピスも買っておいて1リットルのやつ、今日特売日だから。」
「お兄ちゃん、やっぱ飢えてんじゃん。」なんなんだそのジト目はーこいつ本気で俺が1人エッチが朝の支度に含まれてると思ってんのか?ははは...流石に冗談だよな?
「妹よ、それはどういう意味だ。」
「まんまの意味だよ〜、ほら早く早くー食べちゃって〜」
妹はそう言ってニコニコしながら両手で頬杖し、こちらを眺めている。
全く毎日毎日からかいやがってーーと心の中で思いながら俺はせっせとご飯を食べ終えて、急いで出発する俺と妹。
今朝も猛暑でとても暑く、家を出てからものの数分もしないうちに、汗がだらだらと流れてくる。しかし妹の隣で歩くと生温い風に揺らぐショートカットのいかにも女の子っぽい甘い香りがほのかに漂っていて、暑さを少しばかり忘れさせる。
妹は地区内でも超有名な女子中学生ピアニストでモーツァルトやらショパンやら、とにかくどんな難曲でも大人顔負けに弾ける。音楽に関しては右に出る中学生はいないほどの天才だ。(まぁ学力はそんなんでもないんだけども) 家事は完璧、そして何より欲深さがないということだ。おまけに顔面偏差値も高いときた。(兄の俺が妹の顔面偏差値がいいと思ってて良いのであろうか、いや、良いということにしよう。)
女子友達が極端に少ない俺の心の内を最大限に表現できる家族とも友達ともいえるそれが俺の妹、春日井春桜だ。
「じゃあね〜お兄ちゃん〜ちゃんと勉強するんだよ〜〜保健室とかでサボっちゃダメだよ〜」
いつものように満点の笑顔をしながら手を振り、そう俺に向かって言った。
「はいはいじゃあなー春、演奏会終わったら迎えに行くからいつもの駅前で待ってろよー?」
「にひっひ〜分かってるって〜」
妹に別れを告げ再び高校の方面に歩き出す。妹とは通う学校の方向が同じなのでいつも途中まで送っている。というか俺がいつ保健室でサボったんだ?
ところで俺の成績はというと、妹よりは少しばかり良い...と言っても平均よりちょっと上。スポーツすること自体は好きだがスポーツ観戦は嫌いというかあまり好まな.....
「なぁバロム、そろそろ体交換してくれよー早くしないと朝限定クエストが終わっちゃうんだよー」
相変わらずゲームしか能無しのぐだくだ天使に対し、
「アルッシュくん、ゲームは控える方が良いですよ。ゲームは1日1時間ですよ、ゲームなんて
体に良くありません。大体アルッシュくんは自分の体の健康を考えなさすぎなんですーそんなんだからお父様に堕天させられるんですよ。」
などと言ってお説教をしている同一人物なのに別人格の悪魔かメイドかわからない女の子(仮)
「おいおい、バロムよ、俺、これでも一応神だぞ?体の健康とかそんなんこの大天使ルシファーが気をつける必要などない!!」
今朝もこんな感じだ。鏡があればこの二重人格...ではなく、別人格はコミュニケーションを交わすことができる、というか側から見ればお母さんとダメ息子の会話みたいな感じだが...
「何言ってるんですか、この前思いっきり地球の最も恐れられてるウイルス、インフルエンザZにかかったじゃないですか。」
あのアルルが急に意味不明なワードを口にした。地球上で最も恐れられているウイルスがインフルエンザぜっと??血液型によってインフルの違いがあるってのは知ってるがインフルエンザZってなに?マジ○ガーZかなにかか?と密かに思った。
「あ、あれはそのなんだ、わざとインフルって奴に体を乗っ取らせたまでだ!!」
アルッシュは胸を張ってそう言ってはいたが、体を乗っ取るとか良くもまぁこいつ堂々と俺の前で言えたな、おまえも乗っ取る側じゃねーかよ。
「とにかく今日は晩御飯までゲームはお預けです。」
「やだぁぁ〜鏡の中何もないじゃん!お前の服と化粧とちっこいテーブルとテレビ、それにお前の下着の入ったタンスしかないじゃんかーどんな下着履いてんのかおまえのご主人様にバラすぞ?」
アルッシュが使う天術はアルルが使う魔術よりもパワーが遥かに上回っているため、俺に取り憑いて二つの人格に分けられた際に、アルルがアルッシュの魔力に制限を施した。そのためアルッシュはどう足掻いてもアルルには勝てない。しかし、今日はヤケに強気を見せている。
「アルッシュくん、今すぐに魔術をかけて鏡から永久消滅させることも可能ですがお望みー」
アルルは左手を鏡の近くまで持って行き、鋭く獣の如く睨みつけてアルッシュを一瞬にして利口にさせた。
「ごめんなさい、今日は大人しくしてます。」
「アルッシュくんたらお利口さんですね〜」
先ほどまでの殺気らしきものを解いたが、それに代わって逆に妙に怖さを感じる、ウソでも爽やかとは言えない笑顔をしている。
「....いやお利口っておまえ、、完全に殺す宣言してただろ、それは口実ではなく脅しっていうだぜアルル」
こいつらは鏡のある所ならば2つの人格同士でこのように会話と転生することが可能。普段鏡に手をかざして且つ呪文をぶつぶつ唱えているが、実際呪文はただの格好だけで、手をかざし数秒待っているだけで転生は可能なのだそう。ならばその無駄な時間をなぜやりたがると、謎すぎて仕方がない。鏡の中の世界も存在するらしいが、アルル曰くスーパーハイテク上級魔術でアルッシュがその部屋から出れないようになってるらしく、しかも先ほども述べた通り、アルッシュ自体は自力でその部屋から外の鏡の世界に出ることが出来ない。可哀想にーいや、可哀想ではないな、自業自得だなこんなやつ。
「アルッシュおまえはもうずっとそん中いてろーアルルの方が役に立つし、邪魔にならないし、大人しいから俺はアルルだけでいいよーお前は一生そこで暮らしてろー」
俺はアルッシュが映る鏡の方は見る気もせず、歩き続けた。
「おいおい、なんだ?この大天使ルシファー様に対する態度は? それにその言い分からして俺が何もしてない、何も出来ない子みたいじゃないか!!」
「「 実際そーだろ!!!」」
俺とアルルが口を合わせて言った。
「まぁでもアルッシュくんが外に出てくれないと情報収集は出来ないのも確かですし、私機械使うの苦手なんで。」
アルルのその一言にアルッシュが反応し、
「そーらみろ!この大天使ルシファー様の手にかかればどんな機械だろうと操作なんてちょちょいのちょいだ!!だから早く出してーおねがーいー」
そんなことをごちゃごちゃとアルッシュが言ってるうちに学校に着いてしまった。全くなんて騒がしい登校なんだ。朝くらい静かに過ごさせてくれよホント。
それで、俺の学校が通っているのがーこの私立天津甕星高校だがー剣道の名門校としてもその他の分野でも全国でも有数の名門私立学校だ。そのため学力もかなり高い方に属される。確か去年は、偏差値66以上ないと入れ無かったはずである。実際俺の中学の成績じゃあ、こんなところに入れるわけもないのだが、剣道のスポーツ推薦でなんとか受かったのがこの学校である。しかし、学校の誰もが俺が剣道を極めていたーーなんて思わないのだろう。何故ならこの俺はとってつもなく友達が少ない!!!まぁーーこんなこと当然胸を張って誇れない上にそろそろ友達を増やさないとまずい。というか女子友も徐々に作っていかなければ俺の学園生活が白紙で終わってしまうーー!!その状況は避けたい。というかその状況になるのだけは断固断る!!
「はぁーー誰か女子が声をかけてくんないものかね。」
自分のクラスに久しぶりに入り、自席に腰を降ろして一言目がこのため息プラスこの発言である。
「よぉアキラお久〜一言目がそれとかアキラらしいってゆーかなんてゆーか〜しばらく見ないうちにまた一段と暗さが増したな、全体的に〜」
このメガネかけ、シャキッとしていてキラーんの効果音が似合いそうな奴は俺の数少ない友達のうちの1人、二宮康太。彼は学園のトップ10位に入る天才の1人で、勉強はほとんどこいつに教えてもらっている。その見た目とナンパ趣味から、俺はたまにキザメガネとアダ名で呼ぶことがある。
「おはよーこーたー。おまえこそそのメガネに輝きが増したんじゃねーか? あれ、そー言えば今日まだ、いいんちょー見かけてないけどいいんちょーは?」
「あーーいいんちょーなら多分いつものをやってるんじゃーー」
そう言いかけた矢先、俺らの学級委員長が全速力で走ってきた何やら彼女の作った犬型ロボットと追いかけっこをしているーー
あれれ....ちょっと待て、かけっこというか....思いっきり俺方面に向かってきてますけど!!??
「ワンワンっっ」
「こらぁーまてぇーーうちのロボワン二号機KUDOU んねぇーお願いーー止まってよー、おいちょっと待たんかいクドウ!!」
大阪弁でクドウとか著作権問題だろ、うちの作者訴えられるんぞ。というか今はそんなことは問題ではなく早くこの犬型ロボを回避しないと!でないと何が起こるかわかったもんじゃない!俺は反射的に全力の小声で、
「アルルゥゥゥゥ」
と叫んでしまっていたがべつに叫ぶ必要無かったのだろう。
アルルは俺が叫ぶ数秒前から攻撃の構えをしていて、残り数センチというところで見事にパーツごと、バラバラに粉砕させてみせた。
「あっちゃーーなんてことをーうちの犬ロボが台無しやぁーーめっちゃお気に入りの試作品やったのにぃーほんまそこのにいちゃん、うちのKUDOUを壊した責任取ってもらうでぇぇーぃー」
相変わらずそのクドウネタを引きずってる委員長、
「いや、壊したの俺じゃないし、おまえの機械製造技術が足りなかっただけだろ。」
と俺は嘆いている彼女に勝手に壊れた理由を誤魔化した。
「そんなはずはないんやけどなぁー、どの部品も改良に改良を重ね、少ない部費を一生懸命やりくりして、汗と涙を拭う日々をこのロボに詰め込んだんやもん。」
委員長は目をわざとうるつかせながらそう言ってはいたが、おいちょっと待て。よくよく思い出してみると、夏休み前に委員長の部室に寄る機会があったから部室に入ってみたけど、未完成のガラクタばっかだったよーなー?よっぽどの飽き性なんだろうな、委員長は。
「まぁーまぁーいいんちょー落ち着いて〜ほらいいんちょーそろそろ授業始まるし、日直の仕事さっさとやったほうが良いんじゃない?」
とキザメガネは苦笑いしながら、委員長の不満を沈めようとしてくれた。
「あーほんま忘れとったわ、今日から学校始まるんやったなー、いやぁここ数日学校泊まり込みで犬ロボやらなんやら開発しててボケとったわ〜どおりでいつもよりわーわーガヤガヤしてる訳やな〜」
といつものスマイルを見せ、せっせと日直の仕事をかたしに行く委員長。
彼女の存在がそもそも愉快で変わり者だが名前がそれ以上に変わっていて八月一日今日夏と書いてやぶききょうかと読む。能天気で奇才、しかし学校ではかなりの有名人の1人。学歴は康太とほぼ同レベル。彼女も学年トップの学力レベルはあるのだが、いつも機械を弄ってて忙しいため、家で勉強をする時間を、機械を弄る時間として使うのが彼女の日常だと自分で語っていたことがあった。彼女は高校入学時に大阪の堺市からここへ何かしらの事情で上京したそうだが、いつもその理由を聞くたび、何故か流されてしまう。まぁ、能天気でも悩みとか訳があるってことなんだと思う。
キーンコーンカーンコーン
チャイムと同時にうちの担任、博打大和(ばくちやまと)先生が入ってきた、ちなみにこの先生もかなり特殊で...
「てめぇーら、新学期だぁぁぁぁ!!!!夏休み明けの新学期ってのはどいつもこいつも弛んでいる時期だ!!!自分のハートにしっかりと帯を締めなおして今日から共に歩んで行くぞ!!!何時も気合いを忘れんなぁぁぁ!!うぇぇぇぇい!!」
・・・でたこの意味わからない声を無駄に張り上げて、まるで応援団長のようなヤンキー風の演説。あ、ちなみにこの先生元は暴走族のリーダーを務めてて改心して先生になったらしいけどこれは流石に教師としてダメだろ...というか改心したのか?これで....うちの堕天使といい勝負だろ...
「はい、そんじゃあ新学期も夜露四苦ぅぅー、今日のスケジュールだが、まずーーー」
すると早速先生は黒板に今日のスケジュールを書き、説明し始めた。今日は始業式が30分行われた後に全教科の復習テストを1時まですることになっている。
こんな感じの担任を改めて目の当たりにすると、早く先生チェンジしてくれよと、今にでも泣き出しそうな気分になる。
「いつみても素晴らしい先生ですね、憧れます」
だが俺の隣でそれを聞いていたアルルは、手を胸の前で重ね、恍惚とした表情を浮かべている。
こいつのツボはよく分からん…。
キーンコーンカーンコーン
「はぁーー復習テスト終わったぁぁー」
ようやくテストを終えた俺が一息吐いて背伸びをしてるところにいつも通りの2人が絡んできた。
「そうだな、まぁあんなミジンコでも出来そうな復習テストなんて全教科90以上は取れるな。」
「あはは〜うちいつも通りにノー勉でもスラスラ解けたわ〜あれは確かに簡単だったやん、ね?こうちゃん。」
おまえら悪魔か!!うちの悪魔より悪魔か!!生徒約250人中の100位くらいの俺に気を使え!察しろ!
「....だ、だよなぁ、いやマジ超楽勝、あんなゴミ問題解けない奴いんの?例えばほら、仏教を開いた人物名を答えよってゆー問題、あんなん楽勝すぎて吹いちゃったよ全く〜 ザビエルに決まってるだろってんだ。」
俺はちょうど先ほど回収された歴史の復習問題の解答欄に答えた自信満々問題の1つを彼らに堂々と胸はって答えた、すると2人とも苦笑し、数秒の沈黙をしてから2人して、
「俺ほんと思うんだけどアキラってさ、」
「うちほんま思うんやけどアッキーってさ、」
「筋金入りのバカだな。」
「通天閣の高さほどのアホやんね。」
野郎、どっちも頭いいからって俺をバカにしやがってーー
「アホとかバカとか言わないでくれよーゆういつ友達のおまえらに真面目な顔でそんなこと言われるの流石の俺でも傷つくぜー?それに俺歴史苦手だしぃー」
と言い訳を一通り述べてから隣にいるアルルの方におまえはこの問題解けてたか?と言わんばかりの視線を送ってみたが、アルルもあいつら同様の表情をして、
「誠に申し上げにくいのですが、人間界の情報量が少ない私にでも解る問題でした、旦那様。」
….もういいよもー誰も俺の仲間じゃないもーん。
と少しばかり心の中でスネてしまった俺氏。
「今日はこれで学校終わりだそうだから昼3人でどっか食べに行こーぜ? 」
康太が急に俺らを昼飯に誘ってきた。
「それさんせーい、うちこの頃まともなご飯食べとらんからね〜〜、んーせやな〜サイザリアに行こ〜や、うちステーキ食べたいねん〜あ、ラザニアでもええかも〜どっちにしたらええか迷うなぁ〜ほなうち両方食べる〜」
流石委員長女子とは思えないほどの食欲アピールをする。
「いいぜー今日朝起きるの遅かったから妹の弁当持ってくるの忘れちゃったしな。」
そう俺が首に手をかけて言うと、
「お、ええですなぁ〜あんな可愛い妹ちゃんの愛妹弁当を毎日堪能出来るだけでも羨ましい限りですわ〜」
実は委員長は前に妹にあったことがあり、それからすっかりうちの妹のことがお気に入りの様子だ。
「ほれ、いいんちょーアキラをからかうのもいいがちょうど昼時になるから、なるべく人混みを避けたいし早目に出発するぞー」
そう言って康太は俺を委員長のからかいから助けてくれた。
「あ、そっかぁ〜、分かったよ〜早よ行こっ早よ行こっ」
と委員長は言って、せっせと文房具をカバンに詰め込んで、俺たちはサイザリアに向かうことにした。
→→→→→→→
しっかしサイザリアなんて1年ぶりくらいかなー。ここしばらくは妹とアルルが食事を用意してくれていたから外で食べる機会も少なかったしなんかちょっと新鮮だなぁ。
などと考えてちらっとアルルの方へ目をやるとアルルは俺が眺めてるメニューに対して目をキラキラさせながらまるで外国人が初めて日本の料理店に入ったかのように、
「おぉぉぉーーー私が作る料理よりも美味しそうですね!ヴァリエーション豊富すぎます!流石はジャパニーズレストランですね旦那様。」
なんか1人で盛り上がってるこの子は置いといて俺はハンバーグを頼むことにした。
康太はクリームパスタを、そして委員長は...メガステーキセットとメロンソーダそれにプラスデザートのホットケーキ3枚...カロリー取りすぎではあるまいかとこっちが心配してしまうほどの量を頼んでいた。
3人とも注文し終えるとこんな会話が始まった。
「んねっ、2人とも知っとる??ここら辺の噂っていうか都市伝説なんやけど、最近ここらで不法侵入者が多発しとって、捕まった犯人が口を合わせ、こう言うらしいんや。。何をしていたか全く覚えてない、気付いた時には警察署にいた、ってゆーねんーなんか変わった話やろー??」
まるで関西のおばさんが立ち話してるかのように委員長はその都市伝説とやらを語り出した。
「なーんだそれ?マジ草生えるっての、なぁアキラ?」
康太は俺の方を向いて質問してきたが、どうやら話からして悪魔もしくは天使が関わってるようだ。まぁこの手の話の場合、大抵は悪魔が悪さをしているパターンだが、とにかくそいつらを見つけて本体から引きづり出すのが俺らの仕事ーーというかボランティア活動だ。というかこれだけ働いて来たんだからなにか報酬を貰ってもいいと思うんだけどな.....などとついつい考えてしまうが、当然そんなうまい話などない。
「ーーぃアキラ、なぁアキラーなにぼやーっとしてんだよー久しぶりに外出して疲れたのか?おまえはどう思うよ?そんなのデタラメにきまってるよな?」
どうやら俺は考え込んでてぼーっとしていたようだ。俺が康太の質問に答えようと口を開きかけたが委員長が隣から割り込んで来て、
「ほんまこーちゃんはあかんなぁー、夢がないねん!夢が!!都市伝説なんて信じるかどーかは、本人次第やで〜まぁうちは信じとるけどぉ? アッキーはどうなん?信じるか信じないかはアッキー次第です!!」
委員長は俺に人差し指を真顔で指してきた。どこかのテレビ番組で見たことあるようなネタなので、先ほどの康太の質問と委員長にツッコミも兼ねて、
「ちょいまて、俺が引きこもりみたいなこと言うな、後その他の誰かがやってそうなセリフを口にすんな。話戻すけど、俺は都市伝説そこそこ信じてる方....かな。」
実際すぐそこには堕天使もいるんだから、都市伝説も本当の話が少なからず転がってるんだろう。
それを聞いた委員長は目を大きく開いて、
「せっやろ〜!!流石アッキー〜そこのガリ勉メガネと大違いやなぁ〜〜、アッキーも都市伝説興味あったりするんや〜」
「そうだな、、、ないこともない、かな。」
と意味ありげに発言した。この二年間あり得ない出来事が多すぎて現実離れしてるところがある。時に笑い、時に悲しみ、時に怒り、あの記憶は、はたして現実だったのかそれとも幻想だったのか今でも信じがたいものがある。俺の剣で守れなかったあの子はもう帰ってこない...もうあの日の思い出は帰ってこない....これらが本当はただの都市伝説で、全てが偽りだったらいいのに。
そんなこんなでくだらない話をしていたら、10分ほどで頼んでいた料理が手元に来た、流石はファミリーレストランってだけあって仕事が早い。
「なんですって.....!?この悪魔メイドの私ですらどの料理も15分はかかるというのに、このお店ではたったの10分で白米、サラダ、ハンバーグの盛り付け、しかもドリンクバー付き!....魔術が使えない人間如きに負けるとは....まだまだメイドとして修行しなければなりませんね。」
そんな感じで一人で何やらサイザリアの対応の早さと完璧さに驚きと新たなる熱意を抱いていている悪魔が1人隣で頭を抱えていたが、委員長らが側にいるのでソッとしてあげることにした。
「いっただっきまーす〜〜」
料理が届いてすぐに、まるでハイエナのように委員長は手にナイフとフォークを素早く握りしめ、料理にありついていた。
「と言うかいいんちょーメカニックのくせになんで都市伝説に興味あんの?」
とバカにしたような口調で康太がいいんちょーに問いかけた。
「メカニックだからってーテレビは見るしー食事も取るしー音楽も聴くしー他のものにも興味あるちゅーねん。」
「まぁ、誰にだって長所や短所、趣味は様々だしいいんじゃね?」
俺は超久しぶりに委員長の肩を持ってあげた。
「今日はやけにいいんちょーの肩持つなーアキラー。」
つれないなーこいつ、みたいな顔で康太は俺にそう言うと、
「はっはぁーん、アッキーはいつでもうちの味方やでっ、ね?アッキー。」
委員長は食事をとりながらドヤっとしていたが、そんな彼女に対し俺は、
「いや、別にそうでもないけど、俺は自分が信じるものの味方だから。」
と俺は彼女から受けている安い信頼を全力で振り払った。
「えぇーアッキーほんま〜相変わらずつれへんなー」
などと3人で時間を忘れて話していた。
ふと店の壁にかけてある時計を見ると、午後一時半を丁度回ったところだった。
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