普通に暮らして

石窯パリサク

若さとは尊いはずなのですがどうなのさ?

 自分、若作りじゃないんだわさ。

 親類に同じ変異を持つ人が累代に渡り度々存在していたし。


 変異。

 突然変異じゃないのが困る。

 潜伏的に受け継がれてきてる遺伝だそうだ。


 頻繁に産まれる訳じゃ無いのに、こうして自分が産まれた事に繋がっている。

 低確率で現われるが、あまり現われないらしい。


 ご先祖ご一同の皆さんもさ、産まれる度にこんな気持ちをもって暮らしていたんでしょう。


 本人達も家族達もさ。


 そんでもって、当の本人が亡くなった後、暫くは一族郎党の既婚率が下がったりしていた。

 らしい。


 普通じゃないのが実際に生きて動いて、一緒に暮らしている身内に居るんだもの、きっと心情的に穏やかではないよね。


 ご先祖本人が亡くなった後に、一人も変異持ちで産まれないと判ると、また既婚率が普通に回復する。


 直面させられた世代はそこはかとなく困る。

 けど、頻繁に産まれる訳じゃ無い。


 両親にとっては降って湧いたような難物同然の変異具合だったよね。

 心情を想うとはかり知れない事に気付くけど。

 子の親になった事が無いから当たり前かと納得しきれない事が多い。 

 

 でも大切にそして愛して育ててきていてくれた。

 

 親族一同も、先祖代々の記録や、祖父や曽祖父の代にも自分と同じ遺伝の発現が有った者が居たそうで、節句や盆暮・冠婚葬祭とか、その関連催事などで親戚の集まりがあると、よく聞かされていてすんなり受け入れてくれてたそうだ。



 ホント若作りじゃないんだわ。


 中学校に上がった頃は、みんなただちょっと年上っぽくて、逆に自分がちょっとちんちくりんという感じの差で済んでた。

 まあ、実際小柄でちんちくりんだったからさー、そういうもんだと思ってたけどさ。


「おまえはまだそんな事を面白がっているんだねー」


 高校ではクラスメイトがそんな事を自分に言い放った。


「ご本人ですか?入れ替わっていませんよね?」

 自動車免許の取得に行った時から五年ごとの運転免許更新の度に地元警察署に有る運転免許更新受付のお姉様方に訝しがられる。


「きゃー、若いー(むぎゅー)、若さをちょうだいー」

社会人になり、職場や地元同級会の飲み会などで酔った勢いの女連中に抱きつかれるんだよ。


 なんかもうね。

ぜんぜん嫌じゃ無いのが若さだろうか?


 心身の老化が遅い。

 遅いだけで強靭だったり無病息災でも超長寿じゃ無い。

 あ。超長寿ではない事はさ、過去に産まれて生きてきたご先祖の記録が残っているからわかってる。


 身もココロも若いゆえに、同級生連中との思考や、実年齢とビジュアルの齟齬や乖離が進む。

 

 そんなでもさ、関わり合いを断ち切らないでいてくれる、友人達がいてくれる。


 くれる。

 受動的。

 択ぶとかありえねー。

 

 気味悪がったり、自分の加齢を意識させられるのが嫌なのか、そんな感じで離れる人は離れる。

 そんな心情になる人が確実にいる事は暮らす上で経験して学んだ。


 ビジュアルは同じ人だからこそ、いつしか違和感を感じたならさ、殊更生理的根底に効くよね。


 そりゃあ理屈じゃ無いもの。



 若さが尊いのか分らないよ。

 

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普通に暮らして 石窯パリサク @CobaltPudding

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