ミカンの学校

にのい・しち

ミカンの学校

 量子論に置いて、人間の目で見えない物は、何が起きているか認識出来ません。


 愛媛県のとある工場。

 出荷を待つミカンの箱も同じで、フタを閉じられた箱の中では何が起きているか、人間にはわかりません。


 箱の中では、何が起きているのか――――。


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 箱に規則正しく詰められた、ミカンの生徒を前に、教師のミカンは解説をする。


「と、言うように、人はミカンの上に、ミカンを乗せる。誰の言葉か分かる人?」


 この問いに、対し不真面目な回答が返って来る。


「ははは! バカじゃねえの? 先生。何言ってんのか、解んねぇーよ!」


 ガラの悪い不良のミカンが、ミカンの教師を侮辱すると、すかさず、頭の良さそうなミカンが制止する。


「君、授業中は静に、クラスのみんなが迷惑しているじゃないか」


 ガラの悪いミカンは、突っかかる。


「うるせえ! このインテリ童貞! お前から、童貞臭がハンパねぇんだよ!」


 頭の良さそうなミカンが、思わず一歩引く。


「しししし、侵害だ! イイイ、インテリが童貞とは、だだだだ、誰が決めたんだ!?」


「思った以上に動揺してんなぁ」


 見かねた、委員長風の女子ミカンが、割って入る。


「ねぇ、止めなよ~」


「うるせぇブス! お前のこの童貞が好きなのかぁ?」


「ひ、酷い! こんな童貞、好きになるわけ無いじゃない!」


 この場で、一番傷付いたのは、頭の良さそうなミカンだが、それを無視して彼女は、不良ミカンが言った暴言に、すすり泣く。


 クラスにいる、女子のミカン達は、立ち上がり抗議する。


「女ミカンを泣かせるなんて最低!」「謝んなよ!」「このクズミカン!」


 不良のミカンは、女子ミカン達の抗議に逆上した。


「うるせえ! ブス共! お前ら一人残らず、犯すからな!!」


「最低っ!」「信じられない!」「あんたなんかに出来る訳無いでしょ!?」


「うるせえ! 犯してもらえるだけ、ありがたいと思え、ゲロビッチ共!」 


 教師のミカンは、生徒のミカン達を注目させる。


「はーい。みんな静に、彼の事は、ほって置きましょう」


 ミカンの教師の、意外にもドライな反応に、不良のミカンは反発する。


「おい! 先生! シカトしてんじゃねよ!?」


「黙りなさい!」


 思わぬ反撃に、不良ミカンは黙る。


「君のように腐ったミカンは、居るだけで、周囲に迷惑をかける」


「俺は腐ったミカンじゃねぇ!!」


「お前は腐ったミカンだ! 頭に青カビがわいてるだろ!?」


 不良ミカンは、教師に言われ、自分の頭を触り、初めて自分の青カビに気付き、驚愕する。

 教師のミカンは強い口調で言う。


「お前のようなミカンは、周りにカビと言う、悪影響をもたらす。出て行きなさい!」


「出て行けって、あんた、それでも教師か!?」


「私は教師じゃない! 非正規雇用の臨時教員、アルバイトだ!!」


 不良ミカンは唖然とする。


「お前のようなクズミカンは、このミカンの箱と言う学校、社会から追放したほうが、世の中の為だ! お前が居る事で私の評価も下がる。出て行け!」


 不良のミカンは、臨時教員の言葉に、返す言葉もありませんでした。


 臨時教員の仕打ちに、不良ミカンはクラスの同情を求め、見回します。


 でも、傍若無人な彼に、誰一人、助け舟を出すミカンはいません。


 やがて、行き場を無くした彼は、出荷工場で働く作業員の手により、箱の中からつまみ出されました。


 ゴミ箱に捨てられ、孤独と劣悪な環境に置かれた、不良ミカンは、改めて自分が、周りにした迷惑を振り返ります。

 暴言を吐き、良いミカン達を腐らせた。青カビのせいとは言え、自分は周りから、嫌われて当然だと思いました。

 彼は絶望し、失意のどん底に落ち、孤独にうちひしがれ、青カビに身も中身も浸食され、腐り果てます。


 が、そこに救いの手が――――出荷工場に、製薬会社の研究員がやって来て、薬剤の研究用に彼を持って帰り、腐ったミカンの青カビから、ペニシリンが作られました。


 そして彼は、抗生物質として、立派に更生し、人々の役に立ちます。


 量子論では、未来もまたどう転ぶか解りません――――。

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