林間学校③

結局俺たちは6時ギリギリにホテルに戻った。ホテルとは名ばかりの温泉旅館らしい。俺は素早く支度(とはいえ朝から私服行動だったで着替えをしなくて済む)を済ませ、6時半には夕食のため大広間へ向かった。


このホテル、大広間は和室と洋室の2つがあり、俺たちが使うのは洋室の方だった。それも半分だけ。使わない分はついたてで仕切られている。まずテーブルが8つある。教員用と1班から7班までで計8つとのこと。そしてテーブルには6つの椅子と食器が用意されていた。肝心の夕食の内容はバイキングだ。


大広間に着いた俺たちはまず、平野先生による夕食や夕食後の自由時間、入浴についての説明を聞いた。そして7時には夕食が始まった。俺は一目散に食事を取りに行く。


夕食後は一旦部屋に戻った。部屋には布団が6つ綺麗に敷かれていた。さてこの後どうするか。


夕方後は10時まで自由時間でその間各自入浴を済ませることだった。ただし班長は9時半から平野先生と山口先生が泊まる部屋で班長会議がある。つまり6班の班長である俺は着替えと移動を考えれば9時までに入浴を済ませなければならない。


俺は寝間着に着替える時は大浴場の更衣室で済ませればいいと思い、夕食後すぐ大浴場に向かった。大浴場で体を洗い流すと露天風呂に向かった。しかしこの露天風呂には1つだけある重大な問題があった。


このホテルの大浴場は構造上、女湯が9階で男湯が10階(最上階)にあるらしい。しかし、その構造に問題があった。それは男湯の露天風呂から女湯の露天風呂が丸見えということである。普通は柵で覆われているはずだが、展望風呂のため屋根もなく柵が低い。とりあえず露天風呂と柵の間には転落とのぞき防止のために立入禁止と書かれた札が置かれたスペースがあるのだが、風呂から立ち上がって柵に近寄れば女湯が丸見えという状況なのだ。


余談だが、女湯は更衣室をかなり広めに取っているので、男湯の更衣室の広さは女湯の半分くらいしかないらしい。そのため男湯の大浴場の下は女湯の更衣室、男湯の露天風呂の下は女湯の大浴場で男湯の露天風呂から女湯の露天風呂が丸見えという状態になっているとか。


俺が露天風呂に入ると、ほどなくして下の女湯からもガラリという扉が開く音が鳴った。誰かが露天風呂に入ってきたらしい。


「おーい、誰かいるか?」


俺はその女湯に向かって大声を発した。


「私よ私。平野先生から男湯がすぐ上にあるって聞いたけどまさか本当だったとはね」


声の主は植田さんだった。


「露天風呂に入ってるのお前だけか?」


俺は植田さんに問いかけた。


「そうよ。他の女子はまだ部屋にいるか大浴場よ。まさか上からのぞき見するんじゃないでしょうね?」


「馬鹿、俺がそんなことするわけねーだろ!」


「まぁ渡辺くんならのぞかれても私は・・・」


「今お前何て言った?俺の名前出してただろ。最後の方よく聞こえんかった」


「別に・・・なんでもないわよ!」


以上が俺と植田さんのやりとり。この会話中に相川さんと野村さんも露天風呂に入ってきたらしい。


「和美~、今渡辺くんと何か話してたでしょ?」


「うらら!?」


「もしかして和美、渡辺くんのこと・・・」


「真奈まで!」


以上が3人のやりとり。丸聞こえだ。


「つーか桜井さんと寺内さんはいないのか?」


俺は3人に話しかける。


「今テレビ見てるらしくて後で入るってさ」


と野村さんの返してきた。すると、


「渡辺くんはのぞかないの~?アイドルの裸見放題だよ」


相川さんが俺に話しかけてきた。


「見んわ!お前ら痴女か!」


そう俺は返事する。


「渡辺くんならのぞかれたって平気なのに・・・」


3人は揃ってこんなことを言ってきやがった。とはいえ、俺も少し動揺した。


「お前らいい加減にしろ!俺はそんな趣味ねーぞ」


俺は風呂から上半身を出し、柵にへばりつくように3人に話しかけた。


「も~、渡辺くんのいくじなし~」


そう野村さんが言ってきた。


「お前らと話してるとのぼせそうになってきた。もう俺出るわ。後の話は風呂から出たら聞く。お前ら同じ班だしな。他の連中も露天風呂に入ってきたみたいだし、そいつらと話せ」


そう言って俺は露天風呂から上がった。俺が

3人と色々話していたうちに他の女子生徒数人が露天風呂に入ってきたしもういいだろう。

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