入学式

そして入学式当日、入学式が始まる前に俺たちは3年間使う教室に向かった。教室に掲げられた札には『1年1組』と書かれている。


そして朝9時、本来は授業開始であろうチャイムが鳴ると担任と副担任の先生がやってきた。


「皆様始めまして。3年間このクラスの担任を受け持つことになった平野久美子ひらのくみこです。よろしくお願いします」


「今年1年間このクラスで副担任を務める山口佳奈やまぐちかなです。よろしくお願いします」


そんな感じで平野先生と山口先生の自己紹介が始まった。2人とも今年大学を卒業したばかりの新任教師だということ、平野先生が国語で山口先生が英語担当だということ、今年この学校にいる正規の教員はこの2人だけであとの先生は非常勤だということなど。


「皆さんの自己紹介をやりたいところだけど、9時30分から入学式が始まるので、すぐに移動してください!」


俺たちは平野先生の指示で体育館に移動した。


体育館に入ると、俺たちは異様な雰囲気に包まれた。まず、テレビ局のカメラが何台もある。そして生徒と教職員の合計、約60人より多くいるであろう報道関係者の数。そして来賓者の豪華さ。芸能事務所の関係者はもちろんのこと、誰もがテレビで見たことがある有名人が何人も来ている。


「生徒および保護者・来賓者の皆様に注意事項があります。本日の御船女子高校の入学式はテレビ局で全国中継されます。ですので皆様お静かにお願いします」


山口先生の注意説明を経て、入学式が始まった。


入学式はまず、校長の挨拶から始まった。


「新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。私が御船女子高校の校長である安達幸子です。本校は女性芸能人の育成のため今年度開校されました。あなた方1期生はこの学校の将来を背負う重要な立場にあります。では、生徒の皆様がより素晴らしい学生生活を送れることを期待しています」


続いては校歌の斉唱。平野・山口両先生から校歌が書かれた紙が配られた。しかし1期生であるがゆえに誰も知らない校歌を歌う生徒41人。それでも芸能人養成学校だけあってみんな歌が上手かった。数人を除いては。


校歌の斉唱が終わると、来賓者の挨拶があった。しかし新設校で在校生による新入生歓迎の挨拶がないため、その時間をすべて来賓者の挨拶に割いていた。そのため、来賓者の挨拶が約1時間にわたり長々と行われていた。


来賓者の挨拶が終わるとほどなくして入学式が終了した。都合1時間30分。俺たちは保護者や来賓者、報道関係者の退出を待って教室に戻った。


教室に戻ると、俺含む各生徒の自己紹介があった。その後は学生生活の説明。週5時間歌やダンスのレッスンを受ける授業があること、授業後も生徒の希望に応じた特別レッスンがあり芸能活動をしていない生徒は最低週1回、また部活動もしていない生徒は最低週3回そのレッスンを受けなければいけないこと、そして在学中の芸能界デビューも可能なこと。芸能活動が忙しくてなかなか学校に通えない場合はレポートや補習で対応できることなど。


12時にはホームルームが終了。明日は午前中身体測定で午後は学校の案内、来週の月曜から通常授業が始まるとのことだった。


学校が終わり、学校に隣接する寮に戻ろうとしたが、なぜかテレビ局のインタビューを受ける羽目になった。校門前で待ち構えていたらしい。しかもこの学校の男子枠の存在も知っているらしい。また、俺以外にも数人の生徒がテレビ局のインタビューを受けていた。


そんな感じで俺が寮に戻ったのは12時30分だった。インタビューを受けたクラスメイトも大体同じ時間に戻ってきた。1時からは食堂で昼食。食堂のテレビで録画した入学式の中継を見ながらの昼食だった。朝の情報番組内での生中継だったが、女子生徒の中に1人だけ男子生徒が紛れている光景は実にシュールだった。


そして夕方のニュースでも入学式の内容が複数のテレビ局で報道されていた。俺の受けたインタビューが無事全国ネットで放送されてました。

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