紫色転生~光が導くその先へ~
@Tamaki553
第1話~始まり~
時は戦国.... ではなく、平成32年の日本。
大地の腐敗による食料、疫病問題によって国家壊滅の危機に陥った。日本では、発達したIT技術により人々のIT化を勧める様になった。 つまりロボットになれ、と言うものだ。
完全にロボットになる訳ではなく、人間の生殖器、心臓以外の臓器を機械化する程度のもので、勿論血は流れるし、老化もする。 人間とほぼ変わりない暮らしが出来るのだ。 機械化をする事により毒をも耐えうる強靭な体を得られるのだが、体の機械化に反発する者も少なくない。
『病気への膨大な耐性・寿命の延長・運動能力の増加。 さらには食事をしなくても電気を栄養に変える臓器を体内に植込む事によって飢えることはまず無いだろう』
俺はそんな内容を報道するテレビを欠伸をしながら見て、呟いた。
「この体にも慣れてきたな。 母さんや父さんも機械化をしていれば......」
体を機械化するに当たって必要な条件がある。 それは莫大な費用と健康な身体だ。
俺の親は大地の腐敗による病原菌の繁殖に、第一に巻き込まれた犠牲者の一人で、病死してしまったために機械化を行えなかった。
ギリギリ病気にかかっていなかった俺は、親の財産で体の機械化を行った。
体の機械化にも色々種類があるようで、機械化する部分や機械の種類など、様々なバリエーションがある。 俺は大地の腐敗によって感染する肺・胃・脳(五感)だけを機械化した。 選ぶ機械は勿論現時点では最高クラスの物で、改造した肺は最高の肺活量、胃は毒にも耐え、脳は並列思考が出来、五感はより敏感になった。
その分費用は普通の物より8桁高く、親の保険金を含めた全財産の8割を使い果たしてしまったが、後悔はしていない。親が五感を失う前、機械化しろと、絶対に生き残れと俺に言った。 要は "絶対に生き残れる様に良いものを買った" 訳だ。
値段の話は良いとして。
俺の生活は身体の機械化をしても人間でいた頃の生活とほぼ変わり無い。 変わりは無いが、臓器が機械になるので当然体が慣れるまで時間がかかる。 そんなリハビリも含めて毎朝運動する様にしている。勿論、機械化のせいで息は切れにくいし、周囲の些細な変化が分かるようになった為、運動の止め時も分かる。 気づくと運動が楽しくなっていた。
携帯の画面に映るテレビを見終わった俺は、家の近くの公園、大地が腐敗した場所で毎日の日課である運動を始めようと体を動かした。
その時だった。周辺の変化に気づいたのは。
携帯の画面に夢中になりすぎたのだろうか。これほどまでに大きな変化に気づけなかったのは失態だった。
辺りが紫色に照らされている。
腐敗した地面から湧き出た紫色の粒が自分の周りを浮かび上がり、光る蛍が辺りを飛んでいるかの様に優雅に飛ぶ。
そんな異様な、かつ幻想的な光景に俺はしばし見とれていた。
気が狂ったのだろうか。神々しく、それでいて毒毒しい光に見とれ、さらには俺は触れてしまった。
光に触れた手が光る。 ジリジリと焼ける様な痛みと共に、光が光弾になり体内に浸透していった。
「あぐぅっ!」
触れた光が体内に浸透すると、辺りを優雅に飛んでいた光の粒も一斉に自分に飛びかかってきた。
視界が紫に染まる。
体内に何か異様な力が浸透していくのを感じた。 痛みは少ない、だがとてつも無い吐き気と気怠さに襲われた。 体を機械化した時と同様の症状だ。 まるで、体に新しい臓器が出来たような感覚。
暫くすると、次第に吐き気と気怠さが治っていった。
だが代わりに五感が薄くなっていく。
周囲に何があるのかも分からない状況で記憶を辿り、自分の家まで戻ろうとした。
生きなければならない。
最後にそう思った俺は意識を手放したのだった。
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