第4話 これからの日常
話は、一時間ほど前に遡る。
今日もいつものように志津が俺の家に来る時間だった。昔から俺と志津の両親は共働きだったため、いつからか朝は志津、夜は俺が食事を作ることとなっていた。今日は何を作ろうか考えていると家のインターホンが鳴る。どうやら志津のようだ。いつものように妹の夕日に向かいに行かせる。
「「お邪魔します。」」
何故だか志津の声とはまた、違う声が聞こえたような気がしたが、気のせいだと思い特に気にしなかった。だが、夕日とともにリビングにやってきたのは志津と千春だった。
「え?千春?なんで?」
驚きのあまり声が裏返る。その声を聴き千春は苦笑いを浮かべている。俺の疑問に志津は、満足そうな笑顔を浮かべつつ答えた。
「千春ちゃん一人暮らしだし、一緒に晩御飯食べようかと思って。それと、こっち来て日が浅いだろうし、いろいろ心細いだろうから。」
こう言われてしまうと断り辛い。まあどうせ断れなかっただろうが。
「とりあえず、何が食べたいんだ?今から食材買いに行くから。」
せめてもの抵抗としてため息をつきつつ聞く。
「夕日っオムライスがいい!」
そして夕日のこのリクエストによって、材料を買いに行くこととなった。本当は二人には、夕日とともに家で待っていて欲しかったのだったが、なぜか三人で付いて来てしまった。まあこんな感じで今に至っている。
夕日はずいぶん千春に懐いたようで千春と志津の三人で手をつないでいる。俺とは繋いでくれないのに……。軽く傷つきながらも気を取り直して買い物を続けていく。卵、玉ねぎ、鶏肉、等々次々とカゴに入れていく。材料を入れ終え、三人に声を掛ける。
「会計済ませてくるから外で待っといてくれ。」
言い終えるとレジへ向かった。会計を済ませ三人と合流する。
それにしてもこの三人は可愛い。この状況、役得だと思うかもしれないが変わってみればわかると思う。美少女と歩く、これだけで緊張してしまうのにそれが三人もいるのだ。
この状況はむしろ内二人が幼馴染と妹だという俺以外に果たして耐えられるものはいるのだろうか、いやいないだろう。緊張のあまりキョドってしまうに違いない。そんな事を考えながら心を落ち着かせつつ家まで歩いた。
家に着き俺はオムライスを作り始める。その間二人には夕日と遊んでもらっている。料理をしながら、今日あった出来事を思い出す。本当に様々なことがあった。新しい友達もできたし謎のハプニングも現在進行形で起こっている。ため息を何度ついたか覚えていないが順調な高校生活を送れていると思う、たぶん……。そうこうしつつ四人分作り終える。
「ご飯作ったぞー。遊んだんだから手洗ってからな。」
支度を終え三人を呼び、四人が食卓に出揃ったのを確認する。
「よし、全員座ったな。せーの「「「いただきます!」」」」
掛け声をかけて食べ始める。夕日は今日の出来事が余程嬉しかったらしく、食べながらひっきりなしにしゃべり続けていた。少し聞くのに疲れてきたので魔法の言葉を使った。
「夕日、余った卵でプリン作ったから早く食べなプリン好きだったろ?」
この一言をきっかけに大人しくオムライスを食べ始めた。我が妹ながら、扱いやすくて本当に助かる。夕飯を食べ終え、皿を洗っている間に
「ゆうくんってお母さんみたいだね」
なんて千春に笑われてしまった。せめてお父さんにして欲しい……。
この後、俺も混ざって三人で夕日の遊び相手になる。
暫く遊んでいると、夕日がうとうとしてきたので片付け、お開きとなった。
そして、志津が帰り際に
「千春ちゃんこれからも夕飯食べに来たら?夕日ちゃんも懐いてたし。」
なんて言ってくる。俺が反対する間もなく、とんとん拍子で話が進んでいく。うとうとしていたはずの夕日も目を輝かせながら賛成している。最初は戸惑っていたはずの千春も、流れに押し切られ承諾してしまう。
二人と別れた後、俺はこれからの日常を憂い、これからも増えていくであろうため息をまたしてもつくのだった……
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