Enemy Side
「ふーっ、ふーっ、ふーっ」
赤い戦闘機の操縦席に座る坂田大輔は、大きすぎる呼吸をしながらギリギリとグリップを握る手に力を入れる。
「ご主人さま。落ち着くネ。落ち着くときっといい事アルヨ」
「ふーっ、ふーっ」
「イイですか? 絶対開始前に撃ってはダメヨ」
後ろにいるメイドは男の子に話しかけるが、全く耳に入っていない様子でぶつぶつと呟くように言う。
「な、なんだよあれは……。あんな小さな機体……。フェニックスって言ってたじゃないか。あんな小さい物、ガトリングじゃ捉らえられないよ……。そうか……、そういう作戦だったのか。はは、すっかり騙された。さすがは経験者だ。徹夜で考えた作戦が全部パーだ。どうする? どうすればいい?」
「ご主人サマ。始まったら機体を交差させるネ。交差した後は攻撃していいんですヨ。そしたら後ろに向けて撃つヨ。速度が乗る前ならあの装甲の薄い機体はイチコロネ。大丈夫、今日ご主人サマ幸運の相がアルヨ」
ふぁん!
「ひっ!」
ガタガタと震える手でグリップを握る。
「ご主人サマ。もっと力を抜くネ。力んでもイイ事ナイヨ」
二度目のシグナルが鳴る。
「はっ! はっ! はっ!」
動悸が激しくなり全身から汗が吹き出す。
三度目のシグナル。
ぐぐっと手に力を入れ、これから火を吹き弾丸が飛んで来るであろう相手の銃身を凝視する。
「!?」
突然、相手の砲身が回転を始めた。
「うっ、うわあああああ」
パニックを起こし、握るグリップの指に力を込めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます