君といるその瞬間を
棗哉
第0話 試し読み(試し書き)
登場人物
早坂優。主人公
共感覚「シナスタジア」を持つ男子高校生。
能力のおかげで多くの苦労をしてきている。
橘夕奈。
本(小説)が好きな女子高生。心を許した人の前でしか感情を出さない娘。
本への興味が尽きない。
御島明。結菜の小学校からの親友
少し男勝りな活発な女子高生。夕奈を「夕」って呼んでいる。
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ある日の昼休み、昼食時間にて―――。
夕奈「やっとお昼・・・!」
今日は寝坊して朝食べてこれなかったから、1時間目から腹の虫を抑えるのに必死だった。
明「夕ー。一緒に食べよー。」
夕奈「うん。」
昼食は親友の明と教室で食べている。
やっとの祝福の時間だがここで悲劇が起こる。
夕奈「ん?・・・・あれ?」
明「夕?どしたの?食べないの?」
夕奈「えっと。それが・・・」
皆さん予想がつくと思うが、そう。弁当がないのだ。
鞄には本しか入ってなかった。
寝坊して焦って家を出たんだから、仕方ない。とはならない。いくら夜更かしするくらい読みたい本があるとはいえ、お弁当すっぽかして本入れて来るなんて。このままでは空腹で死んでしまう。
青ざめて固まる結菜。
明「もー。何やってんだか。購買でパンとか買いに行く?」
購買?そんな人がアリのように密集する所行ったらそれこそ命が危ない。
夕奈「・・・・・・・・」
明「もー。仕方ないなー。ほら。私のお弁当半分。」
硬直していた体がピクッと動く。
夕奈「・・・いいの?」
明「今度私にも夕のお弁当食べさせてね?」
夕奈「・・!!うん!あ、ありがとう・・!」
明「いいっていいってこのくらい。じゃあ」
二人「いただきます・・!」
同時刻、同教室の窓際―――。
優「あの席の二人、温かい色。本当に仲のいいんだな。」
共感覚。「シナスタジア」ともいうこの能力。このおかげで様々な経験をしてきた優。そんな彼にとってとても興味深い二人がいた。
橘結菜と御島明。
この二人はいつ「見」ても感情の色が温かい。
特に橘結菜の感情はコロコロ変わって「見」てて楽しかった。
優「あれ?さっきまで喜んでたのに・・・」
急に落ち込んだ色に変わっていた
優「どうしたんだろ。そんなどん底な色をして。こんな暗い色、よっぽどの事があったんじゃ」
明「―――やってんだか。ほら。私のお弁当半分。」
これが聞こえた瞬間、驚きと共に笑みがこぼれた。
まさか、お弁当を忘れてあんなに落ち込んでいたなんて。
これまで「見」てきた感情の中で、一番理由が可笑しくて、面白いと思えた。
もっと知りたい。
もっと見てみたい。
優「・・・いつか、遠くからだけじゃなくて近くで。」
優「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
優『ん?』
夕奈が優を知るのはもう少し先のお話し―――。
君といるその瞬間を 棗哉 @Cana_kii
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