詩集 憧憬

12.景色消去

雨が景色を塗る

夜が景色を塗る

　　　　　　　――青く

　白く

乱雑な　　　　　机に

　　光　　　　　白く

　　　　　　　　カップが

　　　　　　　置かれ

ミルクの　　　底を縁取る

　　　　しずく

眩しく

　　　白く

乱雑な

　　　光

　　　　苛立つ

　　　光（怒り）

　見ないため

　　　　　　水の音のほうへ

―――――――――――――ドアを押し

　　　　　　　　　　　　　　　　外

　　　　　　　　　　　　　　へ

　　　　　　　　　　　出

　　　　　　る

　＼赤

　上　い

の　・　光　　　　　　　　の

　ル　が　　　　　　　　上　ル

　　ビ　　　黒い影　＼赤　・　ビ

　　　　　　が夜に　　　い　が

　　　　　　立つ橋　　　　光

　　　　　　立つよ

　　　　　　うに立

俺　　　　　つ影を

は赤い光を見上げて立っている

　　　　　じっと

　　　　見てい

　　　ると消

　　失する

　光を見

ている

　　　雨が景色を塗る

　　　夜が景色を塗る

青く――――――――

　　　「雲

ひとり　　の運行」を追いかける――――――――

なにかが空で鳴っている

さっきの雨が流れている舗装の上を

でこぼこの傾斜に従い

でこぼこの傾斜に従った今日までの雨が

自らの道を選んで流れたその痕跡に

深くなったでこぼこに従って

降り終えた雨が流れている

あの屹立する影の先端で

　　　　　　静かに点滅する赤色灯はなに

あの騒がしかったしたり顔した

　　　　　　　　　　白色灯の無知はなに

――――雨が塗る

夜が塗る――――　　　雨が塗る――――

――――青く塗る　　　――――夜が塗る

　　　　　　　　　　　青く塗る――――

夜の雲　　（雨が景色を

輪郭が　　（夜が景色を

ほどける　（青く景色を

　　　　　　　　　　　消し――――

けし　きえる景色

色消して混ざる

消えたビルが立っている

消えた雲が動いている

消えた月は隠れたまま

山が消えるように聳えている

それはゆっくりと動いている

青い景色

青色溶媒

輪郭不在

多重輪郭

在るまま景色が消えていく

　　　　　　（光）は

（闇）に呑ま（　）れつづける

（　）は（音）に満たされつづける

　　　　（　）は静　　　寂にほどけ

　　　　　　　（　　　　　）は破れ

　　　　　　　雑　　　　　音

　　　　　のな　（　　　）　かの

　　　　　　　　　無　音

　　　　　　　　（　　　を破って

　　　　　　　　　　闇

　　　　　　　のう（　）ちに

　　　　　　　　価（た）値する

　　　　　　　　か　た　ち

　　　　　　のな）　　　（かの

　　　　　　　　　―――

　　　　　　　　　不　在

　　　　　　　　　　俺

　　　　　　　　　　は

　　　　　　　　　　　　　　　」い

　　　ない「

　　　　　　　永遠に失わ

　営々とむすば　　　　　れつづける

「そこに」も）いない俺（の”目“で

見られた物はない

俺の手は何者にも触れない

足は誰も支えていない

俺はもう俺を待っていない

ここには誰もいない

そのようにして君がいない

赤い明滅のせいで一層の

夜の雨の青い雨の夜に君が立つ

そのようにして

俺がいない　　　（雨が景色を塗る――

君はいない　　　　　　　　　

彼らも　　　　　（夜が景色を塗る――

彼女らも

予めいない　　　（　　　　　　　青く

流動する

　　　　景色は

　　　　　　　景色を

　　　　　　　　　　やめる

やめた　　　　　　　　　　景色を

　　　景色も

　　　　　　距離も

　　　　　　　　　密度も

　　　　　　　　　　　　振動も――

（青く――――――――――――――

（――――――――――――――――

（――――――青く――――――――

（――――――――――――――――

（――――――――――――――青―

（――――――――――――――――

（――――――――――――――――

すべてがない―――――――――――