第42話 新学年⑤

 算数で、最小公倍数の授業をしているときだった。


「まずは2の倍数を、あ、2の倍数のことを何て言うか知ってますか~」


 あちこちで、偶数! という声が上がった。


「そう、偶数だね~。あ、この単元とは全然関係ないけど、2から100までの偶数、全部たすといくらになるでしょ~!」


 ほどなくして、遥香ちゃんが手を挙げた。


「お~、前田さ~ん、さすがだね~、さ~いくらですか~?」


「2550です!」


「お~、せ~か~い、どうやって計算したの~?」


「そろばんをはじきました」


「そろばんが無くてもはじけるなんて、すごいね~、さっすが~、じゃあそろばんができない人はどうしたらいいでしょ~? 筆算をず~っとする? さあ誰か、どうすればいいか分かるひと~!」


 これはどうしても答えたくなって、七海はおそるおそる手を挙げてみた。


「お~、潮村さん!珍しいね~、さ~ど~する~?」


「100まで偶数は50個あります。それを2組用意して、1組は逆に並べます。そしたら、たすと102が50個できます。102×50は5100だから、それを2で割ります」


「お~、すげ~、潮村さんに拍手!」


 まばらに拍手が起こった。


「みんな~、潮村さんは~、こういうことを言ったんだよ~」


2,   4, 6,・・・・・・・・・・98,100

100,98,96,・・・・・・・・・・4,  2

102,102,102,・・・・・102,102     102×50÷2


「2,4,6ってまず普通に偶数を並べるよね。その下に、100,98,96って今度は逆に並べると~、ほら~、上下をたすと102になるよね。この102が~、2から100まで50個の偶数があるから、102×50=5100になるよね~、でもホントは2から100までは1組だけだから、2で割って2550になるんだよ~」


「せんせ~、でもなんで偶数が50個って分かるんですか~?」


「お~いい質問だね~相川さん。相川さん、1から100まで何個の数字がある?」


「100個です」


「だよね~、その100個は、奇数、偶数、奇数、偶数、って順に並んでるよね~、だから100を2で割って、50個なんだよ~」


「なるほど」 

「へ~」 

「おおおそうなんか~」


「なんとかの倍数が何個あるかっていうのは~、この単元の最後の方でやりま~す。でもこうやって、くふうをすれば、簡単に計算できるという、いい例でした~。みんなこの、102×50÷2の計算の意味、分かった~?」


「は~い」


「じゃあもう一度、潮村さんに拍手~!」


 さっきよりは、大きな拍手が起こった。


 授業が終わるとすぐ、遥香ちゃんが席に来た。

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