第19話 二分の一成人式②

「はーいでは今日の宿題は、二分の一成人式で発表する、ぼくのゆめ、わたしのゆめの原稿を書くことですよー。まあ、とりあえず何でもいいから書いてきてねー。発表はまだまだ先だし、書きかえるのもありですよー」


 七海は家に帰っても、ボーっとしたままだった。とりあえず何もしたくなかったし、何も考えたくなかった。


 しばらくして、お腹がキュウと鳴った。


「あ、ご飯炊かなきゃ」


 米を研いでいると、その手の速度がだんだんと遅くなり、完全に止まった。七海は途方に暮れていた。わたしのゆめ、はまだいい。なんとか書けるだろう。幼いころの写真? お父さん? ママへの感謝の手紙? 何それ?


 昔の写真はあるのかもしれない。ママのスマホには残っているかもしれない。しかし、お父さんのことは思い出したくもないし、そう思ってきたからあまり記憶にもない。ママへの感謝の手紙…… それは書けるかもしれないが、嘘になってしまうかもしれないし…… そして書いたとしてもママが参観に来るはずもない……


「あ、そういえば……」


 七海は米を研ぎ、水を浸して釜を炊飯器にセットした。最後に計量カップを使い、きっちりと二合のラインまで水を足して、炊飯開始のボタンを押した。


炊飯を開始します……


 七海は親に渡す封筒をリュックから取り出して、封を開けてみた。


「なにこれ……」

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