第2話 焼肉

  バンッ! がたん! ドタドタドタ……。


「七海! ほらっ! 焼肉行くわよっ! 腹減ってんじゃないのっ! 早く早く! 行くわよっ!」


 パチもんのクロックスをひっかけ、七海は母親の後を急いで追いかけた。靴下も履いていなかったし、スウェットの上下だけだけでは寒かったが、母親の機嫌を損ねないようにすることを優先した。


「久しぶりに海物語が吹いたのよっ! あの台そろそろだなってピンと来たのよ。七海! 今日は食べ放題に飲み放題よっ!」


 ハイになっている母親の後を、小走りで追いかける。雨上がりの夕方の商店街には、雑多なにおいが漂っていた。


「いらっしゃいませ、お二人様でしょうか?」


「そんなの見たら分かるでしょっ! 早く案内してよっ!」


「どうぞこちらです」


「えっと大人一人に、小学生一人ね。飲み放題……まずは生ビールね、この子は水でいいわ」


「かしこまりました。まずはお飲み物をお持ちします」


 もう中1も終わりかけなのに……という言葉を七海は飲み込んだ。



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