ステータスAll1の忌み子の俺がチートな件について 〜チートスキルで世界最強に!?〜

深海 新

第一章

第一話 『忌み子そして旅立ち』

 俺は子供の時に両親からこの世界には、決して拒んではいけない大事なものがあるということを聞いていた。

 それは神から与えられる祝福と呼ばれているものだった、その祝福とよばれるそれは人間だけでなく、魔族や魔物といった、ありとあらゆる生物に与えられる神の慈悲だった。


 その祝福の名前を人は『スキル』と呼んだ。

 また、この世界にはレベルという概念が存在し、ある一定の経験値を溜めるとレベルが上がるという訳のわからない仕組みになっている。


 さらには、レベルが上がると自分自身の身体能力――つまり、ステータスが上がりスキルも増えていくという。

 生命は、生まれると同時にこの世界の神から祝福を受け、一定のステータスとスキルを持って生まれてくる。


 それは人間や動物がもつ才能の一つとされ、その祝福に与えられた効果が強ければ強いほど崇められ、弱ければ弱いほど蔑ろにされてしまう。

 しかし産まれたときに、その祝福を拒んでしまうと、ステータスがALL1になり、あるスキルを習得してしまう。


 ――それが『七つの大罪』というスキルだ。


『暴食』『嫉妬』『色欲』『怠惰』『強欲』『憤怒』『傲慢』の七つから構成されたスキルであり、その一つのどれかを持っている赤子は忌み子として扱われる。


 そして、この物語の主人公である俺――ランスロッド・カーストは『強欲』のスキルを持っている、忌み子だった。



 *



 俺はの職業は現在無職だった、この使えない効果が不明な無能スキルとALL1という常人よりも遥かに低いステータスのせいで、出来る様な仕事が一つもない。

 さらには、この村の人達は全員俺のことを忌み子と知っているため、俺を雇うような奴は誰一人としてこの村にはいない。


「こりゃ、詰んだな」


 そんな愚痴をこぼすのも、先日両親が事故で死んでから5回目だった。

 忌み子である俺は生活も飯も全てが親任せな生活を送っていたので、もし雇い主が見つかってもまともに働くことすらできないかもしれない。


 そんな不安を抱えながら俺は、この先生きていくのだろうか。

 いや、このまま仕事が見つからなければ、親の残した金も底をつき、飯もろくに食えずにただ死んで行くのが落ちだろう。


 もはや俺がこの村で生き残れる確率は0に等しい、それなら親の残した金を持って近くの町にでも行って、仕事を探してそこで暮らすのはどうだろうか。

 しかし、村の外は危険が多すぎる。


 何故なら、村の外にはたくさんの魔物がいて、この世界で最も弱い魔物たちばかりとはいえ、俺のステータスやスキルは使えないし、もしかしたら道の途中で力尽きるかもしれない。

 しかし、やらなければならない、何故なら俺はもうそうするしか他に道は無いのだから。


「とは言ったものの、ステータスALL1の俺が近くの町に行ったところで、何かいい仕事が見つかるのかって話だけどな」


 そんなマイナス思考な事を口に出しながら、俺は自分の荷物である服や食糧、靴や財布などといった大切な物を鞄につめていた。


 そんな俺の顔は激しく、苦痛な顔をしているというのは、自分でもわかっているのだがこの村の住人の俺に対する扱いを見れば、俺が完全に邪魔ものでしかないことが分かってしまう。


 しかし、こんな村にも一人だけ俺の味方がいた。

 それは長年の幼馴染である、シャイナ・ハンスだ、彼女は同い年の中でもいちばん優しい性格をしていて、村の若い男からはかなりの人気がある。


 そのため、彼女は忌み子である俺と仲良くすることに、何の躊躇も抱いていなかった。

 彼女からすれば、俺も村の若い男たちとなんら変わりがないのだろう、それでも忌み子である俺と普通に接してくれる彼女が俺は好きだった。


 まぁ、もうすぐ村を出る俺からしたら、なんら関係のない話かもしれないが……。

 そうやって、シャイナとの過去の良い思い出を心の中で思い出していると、出発の準備が整ってしまっていた。


「さらば、俺のクソみたいな生まれ故郷!」


 俺はそう言って、父の残した遺産の一つである、父の形見の剣を腰にぶら下げて家を後にし、村の出入り口である門のところへと歩いて行った。


 道中、でかい鞄を背負って村の門の方へ歩いている俺を村の住人が見て、「良い気味だ」なんて声が聞こえてきたが、日常茶飯事なので気にしない。


 歩く速度は、ゆっくりだが、着実に門のほうへと向かっている。

 これで、村の奴らと会えなくなると思うと清々するが、シャイナと会えなくなると思うとちょっぴり複雑だ。


 そうだとしても男なら一度決めたことはやらなきゃいけないと、まだ幼いころの俺に父が言った言葉である。

 そう思うと、俺が祝福を拒んだせいで父や母にたくさん迷惑をかけたな……なんで俺は祝福を拒んだのだろう。


 そんなことを考えていると、門に着いてしまっていた。

 ここからが俺の人生の第一歩……としては、貧しいがそれは俺が忌み子だから仕方がないか。


 この世界の全てを恨むことはない、だが昔から俺は一度決めたことは必ずやり遂げる人間だった、だからこそ、俺は村を出て絶対幸せになるんだ。


「――待って!」


 俺が決意を胸にしてる所に聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。

 もしやと、振り返ってみるとそこにいたのは――幼馴染のシャイナだった。


 何故か彼女はいつもの穏やかな表情で無く、怒っている様で且つ涙目でこちらをにらんできていた。


「どうしたんだ?シャイナ」


「ランスロット……何処にいくつもり?」


「何処って、村をでるんだよ」


 そう言った俺を彼女は、怒った表情を崩さないままこう言った。


「なら、私も連れてって!」


「え……?」


「連れて行くか、連れて行かないかどっちなの?」


 そうは言われても、俺は彼女の願いを引き受けるには少しばかり無理があった。

 彼女のスキルは『治癒』――その名前の通り、対象者を治癒する能力だ。


 しかし、見ての通り村の外は危険だし、ステータスALL1の俺も命がけで行くつもりだ、だがそこに彼女を加えれば自分の生存率を上げることが出来るだろう。


 だけど俺は恩人である彼女を危険にさらすような真似は、絶対にできない。

 村の外の魔物は弱いとしても、ステータスALL1の俺はおろか非戦闘向きな彼女では魔物と遭遇すればそこで魔物に殺されるのが目に見えている。


「――無理だ」


「え……?」


「シャイナを危険な目に会わせるわけにはいけないし、それにシャイナが村を出て言ったって知れば、シャイナの両親だって心配するだろ?」


「そ、そのくらい平気よ。だってランスロットが……」


 彼女の眼に涙がたまっているのが分かる。

 忌み子であるこんな俺のために、ここまで気遣ってくれる優しい人間なんてこの村で……いや、この世界で彼女だけなのかもしれない。


 だから、だからこそ、一緒に連れてくのは駄目なんだ。

 彼女がどれかけ悲しもうと、彼女がどれだけ苦しがろうと、俺は彼女を危険な目に合わせる様なことは出来ない。


「ごめん……無理なものは無理なんだ。君を危険な目に合わせることは俺には出来ない……」


「ランスロットの分からず屋っ!」


 そう言って彼女は村の方向へと走って行った。

 これで、いいんだ。

 彼女が俺のために傷つくのは間違っている、危ない目に会うのも間違っている、それならこの村で暮らした方がいい。


 そう心の中で語ると俺は、シャイナが去って行った方向とは真逆の方向――つまり、村の外へと再び歩き出した。


 そして、これが俺の新しい人生への第一歩だった。

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