小屋にて
「空なのか?」
僕は彼女にそう問いかけた。
「空以外の誰に見えるわけ?」
目の前にいる女は、腰に手を据えて、顔をしかめながら言った。
「だっておまえは九年前に……」
「おうおう、勝手に殺してんじゃねぇよ。僕はこの通り足もあるし、ピンピンしてるよ!」
空は、元気よくその場でジャンプした。そこら中腐りかけた、ボロ小屋で跳び跳ねることは自殺行為だ。慌てて、僕は止めるようにと駆け寄る。
跳ねた際に空の足にはあの時の切り傷があった。
「嘘だろ。空が生きていた。空が……」
その場に泣き崩れた。空の目には情けない自分が映ったことだろう。
彼女は、僕の頭に手を置いて、優しく撫でた。
「ごめん。いままで黙っていて。どうしても会わせる顔がなくて。晴之つらかったよね」
周りなんてどうでもよかった。僕は、子どものように泣きじゃくった。そして、たくさん謝った。空がもういいよと言うくらい謝った。
泣き止んだ僕は、空の隣に座って話をした。
九年間。
学校のこと。
友人のこと。
家族のこと。
空は嬉しそうに聞いていた。
僕の中で、一番聞きたかったことは聞かなかった。聞いてしまえば、この奇跡が崩れてしまう気がして。
「また、明日ね」
すっかり話し込んでしまった僕らは慌てて、小屋を出た。空の家は僕とは真逆にある。寂しげな表情を浮かべて、空は僕に手を振った。面影が
また、明日。
僕は空に会うのが楽しみだった。
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